「好き」の盛り合わせ。 森薫『森薫拾遺集』
- 作者: 森薫
- 出版社/メーカー: エンターブレイン
- 発売日: 2012/02/15
- メディア: コミック
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個人的には「好きな漫画家を3人あげて」と言われたら荒木飛呂彦、あずまきよひこの次に名前を挙げる漫画家さんなのですが、『森薫拾遺集』は過去に森薫が描いた作品をかたっぱしから集めてまとめて本にした一冊です。
オープニングはFellows!に掲載された「お屋敷にようこそ旦那様!」。メイドと執事と無理矢理主人にさせられた少年によるスラップスティックコメディ。このマンガを皮切りに、「見えるようになったこと」などの現代ものや「昔買った水着」の妙に艶っぽい人妻水着もの、はたまたサイン会のペーパーやアガサ・クリスティ『フランクフルトへの乗客』の解説マンガなどこれでもかこれでもかと詰め込まれています。
どの作品を読んでも、「ああ、この作者って描くことが本当に好きなんだな」という思いがふつふつと沸き上がります。
それは、「絵」であり、「題材」であり、「物語」であり。
『ONE PIECE』の尾田栄一郎は「生きて動く物は自分で描く」というこだわりを見せるなど、「絵」を、そして「マンガ」を描くことが好きな、その思いが原動力となっている漫画家だと思いますが、森薫もそれに類する感じがします。
例えば、乙嫁語りのアミル。
この絵はその創作課程がネットで公開されました。
●森薫「乙嫁語り」 - コミックナタリー 特集・インタビュー
見ほれてしまうような絵は一本一本の線にあふれる「好き」が込められ、ある種一コマ一コマが芸術品ともいえる作品に仕上がっていると思います。
その「好き」の根本は無意味にキャラクタの造形を好みな設定にしてしまうほどの「フェチ」であり、小道具や食べ物の一つ一つまでしっかりと考察する「こだわり」でもあります。
何か好きなもので6ページ、と言われて「じゃあコルセット描きます!」と鼻息荒く描き上げました。コルセットのアレコレや思いのたけをありったけぶち込もうと、レイアウトをいじくり回すのは生を実感する作業です。(P186)
そしてまたシリアスな本編と打って変わってハチャメチャなあとがきですが、サイン会のペーパーなどではこのハチャメチャを切り出してまとめた感もあり、なににせよお得感満載です。
ごった煮な一冊、そしてごった煮だからこそ森薫の「漫画に対するあふれんばかりの愛情」を満喫できる一冊。森薫ファンなら必読の本でしょう。
- 作者: 森薫
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