珠玉の短編集 笠井スイ『月夜のとらつぐみ』
- 作者: 笠井スイ
- 出版社/メーカー: エンターブレイン
- 発売日: 2011/05/14
- メディア: コミック
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●キュートなお嬢様が「世界」を知る物語 笠井スイ『ジゼル・アラン』
相変わらず生きてくのがつらくなるぐらいお嬢様ジゼルがキュートすぎるのですが、2巻では「世間知らず」なお嬢様が「世間」を知り、それでもなお自分の信念を貫く覚悟を表明した巻でもありました。
1巻の書評でも書きましたが、特筆すべきは彼女の「眼」。エネルギーと意志が溢れる彼女の眼は、彼女の性格そのものであり、そしてまた作者である「笠井スイ」の特長でもあります。
以前、彼女の絵柄を「森薫を彷彿とさせる優しくも描き込まれた1コマ1コマ」と評しましたが、森薫が「犬」だとすれば笠井スイは「猫」。どちらも好きですがやや猫派でありそしてまた吊り目スキーなフジモリにとって、笠井スイの絵というのは非常に好みです。
というわけで『ジゼル・アラン』と同時に発売された彼女の短編集『月夜のとらつぐみ』。
デビュー作<花の森の魔女さん>をはじめ、笠井スイを満喫できる一冊です。
子どもと老婆のひとときのふれあいを自然とともに描いたデビュー作<花の森の魔女さん>、鳥をキュートに擬人化した表題作<月夜のとらつぐみ>と<水面の翡翠>、笑わない美人のバニーガールを笑わせるコメディ、という意外性の一作<仏頂面のバニー>。フジモリ的には本作の白眉です。異国と初恋のお話<遥かファンティエット>、「嘘」を主軸としたシリアスなヒューマンドラマ
登場する女の子たちはいずれもキュートで良い目をしてますし、描きこまれたコマに魅入られることもしばしば。
そして「その作者の様々な世界が楽しめる」という短編集の長所そのままに、様々な物語を満喫できます。
『ジゼル・アラン』が好きな方はもちろん読んで損はありませんし、彼女の絵柄に惹かれた方、フジモリのように吊り目スキーな方など、お手にとってその「絵」と「目」をどうか堪能してください。