『ペイルライダー』(江波光則/ガガガ文庫)
- 作者: 江波光則,しばの番茶
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2011/12/17
- メディア: 文庫
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奇跡の時事ネタktkr
いや、不謹慎だという自覚はありますが、思わず噴いてしまいました。なぜこんな素晴らしいタイミングで(苦笑)。
とはいえ、時事ネタとして成立してしまったのがまったくの偶然というわけでもありません。密告を奨励することによる相互監視によるクラス統治。それは、作中でも触れられていますが、秘密警察による統治体制を彷彿とさせるものです。いわば、某社会主義国家の高校クラス版とでもいうべき体制なわけです。となれば、ここまで見事なシンクロとはいわなくても、現実と虚構とのシンクロは起こるべくして起きた、とはいえます。
ただ、この統治制度、高校生にとって必ずしも学校生活がすべてではないわけです。そう考えれば、やはり作中でも述べられていますが、そう悪い制度でもないように思えます。思えますが、例えば教師からの密告の奨励はありませんが、ナチュラルな相互監視体制によってクラス活動が停滞している『灼熱の小早川さん』(田中ロミオ/ガガガ文庫)などと比較すると、委員会活動や学園祭といったお決まりの対外的なクラス活動や学校行事を、果たしてこのクラスが無事に参加したり円滑に行うことができるのか非常に興味深いのですが、そうした状況への対処が本書では描かれていないのが正直不満ではあります。そういう意味で、本書で描かれているクラスの様子は、青春破壊小説*1というよりもプチテロ小説とでも呼ぶべきもののように思います。
一方で、ブロガーとしての享一の価値観や生活態度というのは非常に共感できちゃいます。享一が運営しているブログのジャンルは映画*2ですし、私のような引きこもりとは違ってオフ会にもある程度積極的に顔を出しています。そうした違いはあるのですが、ブログを運営する上での姿勢や注意点などといった考え方や、私がこうしてブログ記事をつらつら書きながらときに感じる自虐的な気分や劣等感には心当たりがあり過ぎてホントにビックリです(もちろん、ネタバレについてのスタンスなど異なる点も多々ありますのであしからず)。
ネットでは社交的でそこから生まれた気楽な人間関係を大切にしようと思う一方で、学校生活などリアルが起点となった人間関係には破滅的になりリアルをネットに持ち込むことに強く抵抗を覚える。Twitterがときにバカ発見器などと呼ばれることがあるように、ネットだと羽目を外してしまう人間はいます。ですが一方で、ネットだからこそ慎重な言動を心掛けてブログなど自分のスペースを大切にしている私のような人間もまた多いように思うのです。リアル⇔ネットといった単純な二元論ではなくて、アイデンティティの獲得においてネットでのあり方や関係性などがそれだけ重要なものになっているというお話だと思います。
後半以降の暴力的展開は間違いなく読む人を選びます。なので無理にとは言いません。ですが、もし興味がおありでしたら、残りわずかとなってしまいましたが、今年中に読まれることをこっそりオススメしておきます(時事ネタ的な意味で)。