『非実在推理少女あ〜や 1』(作:錦メガネ・画:シオミヤイルカ/星海社COMICS)

非実在推理少女あ~や(1) (星海社COMICS)

非実在推理少女あ~や(1) (星海社COMICS)

推理推参っ
理を推して参る

非実在推理少女あ〜や | 最前線 - フィクション・コミック・Webエンターテイメント
 どんな漫画か興味のある方は、2011年11月27日現在第一話を読むことができますので、実際に読んでいただければお分かりいただけるでしょう。
 ”非実在”とタイトルにありますが、別に非実在青少年的な表現にまつわるあんな問題やこんな問題が扱われているわけでは(少なくとも1巻の段階では)ありません。
 『崩壊者(ディザスタ)』という条理を超えた存在。それは、例えば密室という理論的に説明のつかない不可能状況を生じさせることによって物理法則をねじ曲げて世界の秩序を破壊する存在です。それに対抗する立場にあるのが、不可能状況を可能状況へと書き換える役割を担う『推理者(ディテクタ)』です。
 普通のミステリであれば、不可能状況を解体することで可能状況へと書き換えるのが常套手段です。……というか、常識的にそれしかあり得ません(笑)。ところが、『推理者』は違います。『崩壊者』に改竄された現実をさらに改竄することで現実を取り戻そうとします。いわばマイナス×マイナス=プラス、とでもいうべきでしょうか。まさに推理するのではなく理を推す存在なのです。
 とはいえ、過程においてはそれこそ無茶苦茶するものの、なんとか世界の改竄を最小限(?)にとどめて常識的(?)な世界を守ろうとしている点では、一応は一理あるお話です。……一理しかない、ともいえますが(笑)。ぶっちゃけてしまえば、少年漫画においていかにストーリーに矛盾を生じさせることなく後付け設定を成立させるか、といった裏事情をミステリの形式で見せられているようなお話だといえるでしょう。
 ミステリのパロディ的な要素はそこかしこに盛り込まれていますが、別にそうした予備知識があると楽しめるというようなことはありません。オビには「全ミステリ界への”果たし状”」などといった挑戦的な文句が書かれていますが、そんなに大層なものではありません。不条理の中からそれなりの条理を見つけることで落着するギャグ漫画です。肩の力を抜いて気楽に読むのが吉ですし、肩ひじ張ってミステリについて語りたい人にはオススメできませんのであしからず。