小説すばる「暗黒青春小説特集」
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2010/04/17
- メディア: 雑誌
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小説すばる2010年5月号にて、「青春小説特集」のひと枠として、「暗黒青春小説」が取り上げられていました。
明るい思春期を送れる人なんて一握り、
青春は基本的に鬱屈に満ちたものではないでしょうか。
キラキラしていない青春を送っている(いた)すべての人に贈ります。
とタイトルページに書かれている通り、狭義には鬱屈した「暗黒な」青春を描いた小説を特集していました。
「暗黒な青春」という意味では、小説そのものが暗黒な桜庭一樹『砂糖菓子の弾丸は撃ち抜けない』西尾維新『クビシメロマンチスト』も該当するかもしれませんが、「青春」を暗黒なエピソードで書くという意味で、フジモリ的にはやや外れている感もします。
まさに「暗黒だった青春期」そのものを描く、該当する人間にはトラウマをえぐることこの上ない、という小説と定義すると、意外と該当小説がないようにも思えます。・・・いやなブルーオーシャンだなぁ。
例を挙げろ、というと難しいですが、米澤穂信『ボトルネック』などですかね。森見登美彦『太陽の搭』なんかも、あの文体と作者のセンスでコミカルに仕上がってますが、一歩間違えば暗黒青春小説ど真ん中ですよ。
特集では、『15×24』の新城カズマと『冷たい校舎の時は止まる』の辻村深月が対談しています。
これまた、暗い輝きに満ちた対談です。
新城 オタクというアイデンティティにすがって居場所を確保するのと、本当に好きなことに没頭して、結果的にオタクとみなされて青春時代を過ごすのは、似て非なるものだとは思います。オタクと呼ばれる人たちも、本当にそのジャンルに没頭している人と、ある意味ポジション的にそこを選んでいる人とでは、楽しさはぜんぜん違うと思いますよ。
(P238)
ブックガイドとしては、千野帽子、豊崎由美、米光一成らが「友達ゼロ」「考えすぎ」「非モテ・童貞」「オタク」などこれまた鬱屈としそうなキーワードで暗黒青春小説を紹介しています。
青春小説というと明るい面ばかり目立ちますが、リア充の陰に、「リア充を”リア充”と揶揄してコミニュケーションすることもできない」鬱屈した青春を送る(送った)人もいるわけで、こういった切り口(カテゴライズ)で小説を読むのも面白いなぁ、などと思ったりしました。
【ご参考】 フジモリのプチ書評 千澤のり子『シンフォニック・ロスト』講談社ノベルス