『龍盤七朝 DRAGONBUSTER〈01〉』(秋山瑞人/電撃文庫)
- 作者: 秋山瑞人,藤城陽
- 出版社/メーカー: アスキーメディアワークス
- 発売日: 2008/05/10
- メディア: 文庫
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シェアワールド企画とはいうものの、本書では作中人物たちの出自や心情といったものが丁寧に書き込まれている一方で、世界観の描写は極めて希薄で、シェアワールドとしての面白さは感じられません。もっとも巻末のあとがきによれば、
きっちりした作品世界を事前に作ってそれがのちのち窮屈なルールブックみたいになっちゃうよりも、お互い好きに大暴れしてひとまず設定を増殖させていこう、その結果矛盾が発生しても、それが龍盤世界に対する「秋山史観」「古橋史観」みたいな違いになっていくと面白いよね――というゆるーいコンセプトであります。
(本書p298より)
ということですので、作品の積み重ねによって世界観もまた立ち上がってくるのでしょう。なので、とりあえずは武侠小説(武侠小説 - Wikipedia)めいた中華風ファンタジーということで、あとは本書の続きが刊行されることが何より大事です。
といいますか、本書自体がお話として全然オチがついていない導入の段階にすぎなくて、あとがきに書いてるとおりに次でラストまでいくのかどうかはともかくとして、とにかく続きが出ないことには文字通りお話になりません。
いみじくも作中で演じられる大道芝居・辻芝居と同じことがいえますが、途中で終わってしまう芝居は「緒幕」に過ぎません。
「昼市の大道芝居は『緒幕』つってな、大抵はこういうもんなんだよ。さんざ引っぱって気を持たせた挙句に『続きはまた後ほど』で、ちょん――まあ、夜も更けてからの『本幕』の宣伝が半分に、役者連中の肩慣らしが半分ってとこだな」
(本書p54より)
それでも作中のごとき「緒幕」であれば木戸銭もとられませんので文句を言う筋合いでもないでしょうが、こうして本の形にして世に出してしまって以上は「緒幕」で済ませて逃げられるものでもないでしょう。逆にいえば、「緒幕」で終わらせてはならないという作者の決意表明がそこには込められていると思うのです*1。
虐げられる民”言愚”の青い目を持つ涼孤と卯王朝第十八皇女・月華の剣をきっかけとした出会い。剣によって自らを表現する者、剣によって自らを知ることになる者、剣に生きる者、剣に迷う者。次巻で描かれるという初めての勝利と初めての敗北とはいったい何なのか。「緒幕」のまま終わらせてしまうのではなく、是が非でも続きを出して欲しいです。
【関連】
・『龍盤七朝 DRAGONBUSTER〈02〉』(秋山瑞人/電撃文庫) - 三軒茶屋 別館
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