『龍盤七朝 ケルベロス 壱』(古橋秀之/メディアワークス文庫)

 これは、一匹の怪物の物語だ。
 「一匹」なれど「一頭」とは呼び難い。
 なぜなら、その生きものには頭が三つあるからだ。
 三首四眼五臂六脚、戦場に現れ甲高く喚くと、敵将の首がごろりと落ちる。姿を見れば目が潰れ、影に触れると寿命が縮み、吐き出す毒気だけで一軍が滅びる恐ろしい魔物だと、歴戦の兵までが震え上がる。
 しかし、それはまだまだ先のこと。
 その生きものは、未だこの世に生まれていないのだ。
(本書p4より)

 本書は、秋山瑞人古橋秀之のコンビによるシェアワールド企画”龍盤七朝”第二弾です。とはいえ、本書も『DRAGONBUSTER』1巻と同じく物語としてはまだまだ序盤で、その書き込み具合も世界観より人物に主眼が置かれています。共通する登場人物もいませんので、本書単独でも読むのに何ら支障はありませんのでご安心を。そもそも両作間の時代の前後関係もよく分かりませんしね(笑)。
 不死身の覇王・ラガン*1に七国が蹂躙されている時代において、とある街に三人の半端者が流れ着きます。口八丁のヒョウ*2使い。突くべき鐘を持たない鐘突き男。自称”亡国の皇女”の小便餓鬼……。そんな奇妙な三人の出会いが物語の始まりです。本書はそんな三人の中でも基本的にはヒョウ使いの廉把(レンパ)に焦点があてられています。ヒョウという武器は作中でも述べられていますが不意打ちのための飛び道具で、つまりは刺客が使う武器であって英雄の業として認められるものではありません。ですが、天の刻・地の利・人の和を得れば四寸のヒョウであっても天下を切り取る宝剣となるのではないか。だとすれば、それを得るまでが本シリーズの物語となるのでしょう。
 そんな三人の前に立ちはだかるのが覇王ラガンですが、これがまたとんでもない強さなのです。まさに化け物。もはや人ではありません。「現象」と表現されているのも伊達ではなくて、ゲームバランスも何もあったものではありません*3。そんな理不尽な存在にいかにして立ち向かうのか。何者でもないものが何かになるまでの物語。続きがとても楽しみです。
【関連】『龍盤七朝 DRAGONBUSTER〈01〉』(秋山瑞人/電撃文庫) - 三軒茶屋 別館

*1:漢字に変換できないのでカタカナにて失礼。

*2:金偏に票。

*3:『龍盤七朝シリーズ』ラガンって核兵器なんじゃね? - 主にライトノベルを読むよ^0^/なんてこともいわれてるくらいです(笑)。