私家版2009年ライトノベル ベスト10

 年末ですので書評サイトらしく一応2009年のベストラノベなんぞを挙げてみます。ちなみに私家版です。刊行年数などにかかわらず私が2009年に読んだ本の中から選ばせていただきましたのであしからず(順位も付けていません)。

幽式

幽式 (ガガガ文庫)

幽式 (ガガガ文庫)

 去年の11月に出た本ですが、あくまで私家版ベストなのであしからず。怪異に向けられている興味がやがて自らが抱えている闇から救いへとシフトしていくホラー小説としての面白さと青春小説としての爽やかさが合わさった傑作です。
【関連】『幽式』(一肇/ガガガ文庫) - 三軒茶屋 別館

嘘つきは姫君のはじまり―恋する後宮

 謎解きものとロマンスものとの狭間で揺れ動いている本シリーズですが、3巻は特に謎解きものとして非常によく出来ていたと思います。恋愛模様にまったく興味がないとはいいませんが、本書みたいなものを描かれてしまいますとついつい期待してしまいますね(笑)。
【関連】『嘘つきは姫君のはじまり―恋する後宮』(松田志乃ぶ/コバルト文庫) - 三軒茶屋 別館

星図詠のリーナ

星図詠のリーナ (一迅社文庫)

星図詠のリーナ (一迅社文庫)

 主人公(のひとり)であるお姫様の特技が地図作りという珍しいマッピング・ファンタジーです。地図作りによってその街の暮らしを知ったり政治的問題を把握したり世界の形をつかんでいくという地に足のついた展開は個人的に応援したいと思っています。
【関連】『星図詠のリーナ』(川口士/一迅社文庫) - 三軒茶屋 別館

“文学少女”見習いの、初戀。

 ”文学少女”シリーズのその後が描かれている外伝ですが、作家として生きることを決意した心葉と「文学少女見習い」菜乃が共に成長しながら本編で拾い切れなかったテーマを回収しています。母屋より別宅が大きくなっては困りますが、本編同様い想像力を大切にした”文学少女”の世界が描かれているのが嬉しいです。
【関連】『“文学少女”見習いの、初戀。』(野村美月/ファミ通文庫) - 三軒茶屋 別館

ビスケット・フランケンシュタイン

ビスケット・フランケンシュタイン (メガミ文庫)

ビスケット・フランケンシュタイン (メガミ文庫)

 癌細胞にも似た病巣の継ぎ接ぎで作られた少女によって引き継がれる『フランケンシュタイン』の物語。糖衣に包まれた滅びの物語は陰惨でありながら美しいです。
【関連】『ビスケット・フランケンシュタイン』(日日日/メガミ文庫) - 三軒茶屋 別館

紫色のクオリア

紫色のクオリア (電撃文庫)

紫色のクオリア (電撃文庫)

 2009年ベストラノベを挙げるとすれば本書です。
【関連】『紫色のクオリア』(うえお久光/電撃文庫) - 三軒茶屋 別館

ちょコワ、いかがでしょう?―ほんとにあった、ちょいコワ奇譚集

 虚実が入り混じった”怪談”をライトノベルで描いた意欲作として積極的に評価したいです。
【関連】『ちょコワ、いかがでしょう?―ほんとにあった、ちょいコワ奇譚集』(水城正太郎/富士見ファンタジア文庫) - 三軒茶屋 別館

嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん 8

 なんだかんだいいながらも読み続けているこのシリーズですが、8巻は特にシリーズものとしてギリギリのラインです。酷いといえば酷いですが、私は決して嫌いじゃないです(笑)。
【関連】『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん 8』(入間人間/電撃文庫) - 三軒茶屋 別館

とある飛空士への恋歌 3

とある飛空士への恋歌3 (ガガガ文庫)

とある飛空士への恋歌3 (ガガガ文庫)

 微妙に気になる点もないではないのですが、やはり3巻中盤以降の怒涛の展開には手に汗握りましたし今後の展開も予断を許しません。要注目です。
【関連】『とある飛空士への恋歌 3』(犬村小六/ガガガ文庫) - 三軒茶屋 別館

15×24

15×24 link one せめて明日まで、と彼女は言った (集英社スーパーダッシュ文庫 し 5-1)15×24 link two 大人はわかっちゃくれない (15×24 シリーズ) (スーパーダッシュ文庫)15×24 link three 裏切者! (集英社スーパーダッシュ文庫)15×24 link four Riders of the Mark City (集英社スーパーダッシュ文庫 し 5-4)15×24link five―ロジカルなソウル/ソウルフルなロジック (集英社スーパーダッシュ文庫)15×24 link six この世でたった三つの、ほんとうのこと (集英社スーパーダッシュ文庫 し 5-6)
 2009年ラノベ界の話題賞を挙げるとすれば本作ということになるでしょうか。4ヶ月連続6冊刊行という試み。死とは何か?なぜ自殺してはいけないのか?といった、ともすれば辛気臭くあるいは説教臭くなってしまいますが、しかしながらとても大切なテーマを、15人の視点人物による24時間タイムリミットサスペンスにすることで圧倒的スピード感で一気に読ませてしまうという大胆な試みが面白いです。
【関連】新城カズマ『15x24イチゴーニーヨン link one 「せめて明日まで、と彼女は言った」』集英社スーパーダッシュ文庫 - 三軒茶屋 別館


 ライトノベルはあくまで箸休め的なスタンスで読んでいるつもりではいるのですが、その割には結構読んでます。面白い作品やハッとさせられる作品も多いですし、今後もこうした姿勢を改めるつもりはありません。来年もぼちぼち読んでいきたいと思います。
【関連】私家版2008年ライトノベル ベスト10 - 三軒茶屋 別館