私家版2009年文芸本(?)ベスト5

フジモリの今年最後の更新は、「マンガ以外の」本のベスト5です。
【ご参考】
私家版2009年完結マンガBEST5 - 三軒茶屋 別館
私家版2009年新連載マンガBEST5 - 三軒茶屋 別館

第5位 宇佐和通『都市伝説の正体』祥伝社新書

都市伝説の正体-こんな話を聞いたことはありませんか? (祥伝社新書159)

都市伝説の正体-こんな話を聞いたことはありませんか? (祥伝社新書159)

各地に点在する「都市伝説」をまとめ体系化した、都市伝説の研究本なのですが、フジモリが大の都市伝説好き、民俗学好きということを差し引いても面白かったです。
「物語」とはその成立する仮定ですら「物語」たりえるということを如実に示した一冊だと思います。
宇佐和通『都市伝説の正体』祥伝社新書 - 三軒茶屋 別館

第4位 瀬川深『ミサキラヂオ』早川書房

ミサキラヂオ (想像力の文学)

ミサキラヂオ (想像力の文学)

インパクト的には同作者の『チューバはうたう mit tuba』に軍配が上がりますが、2009年に刊行されたこちらをランクインさせます。
『チューバはうたう mit tuba』と同じく、「キャラクター偏重主義」とは一線を画した人物描写とカメラワークを思わせる巧みな筆致はフジモリのストライクゾーンど真ん中でした。
久々に「文体」だけで他の作品が読みたくなる作者に出会えた気がします。
瀬川深『ミサキラヂオ』早川書房 - 三軒茶屋 別館

第3位 有川浩シアター!メディアワークス文庫

シアター! (メディアワークス文庫)

シアター! (メディアワークス文庫)

最近は現代劇を多く著している有川浩ですが、この『シアター!』もツンデレサラリーマン兄貴とヘタレ劇団作家の弟が繰り広げるシビアで抱腹絶倒でど根性な劇団物語です。
図書館戦争』もそうでしたが、シビアな問題をエンターテイメントの皮で美味しく包むという調理法はあいかわらずお見事です。
有川浩『シアター!』メディアワークス文庫 - 三軒茶屋 別館

第2位 米澤穂信秋期限定栗きんとん事件創元推理文庫

秋期限定栗きんとん事件〈上〉 (創元推理文庫)

秋期限定栗きんとん事件〈上〉 (創元推理文庫)

秋期限定栗きんとん事件 下 (創元推理文庫 M よ 1-6)

秋期限定栗きんとん事件 下 (創元推理文庫 M よ 1-6)

ここ近年で読んだミステリの中でもベストに入る作品です。<小市民>シリーズのなかでの位置づけもさることながら、読後のビターな切れ味もまた本作の特色だと思います。
詳細はアイヨシが語っていますのでそちらに譲りますが(笑)、完結が楽しみな作品です。
『秋期限定栗きんとん事件』(米澤穂信/創元推理文庫) - 三軒茶屋 別館

第1位 新城カズマ15x24集英社スーパーダッシュ文庫

15×24 link one せめて明日まで、と彼女は言った (集英社スーパーダッシュ文庫 し 5-1)15×24 link two 大人はわかっちゃくれない (15×24 シリーズ) (スーパーダッシュ文庫)15×24 link three 裏切者! (集英社スーパーダッシュ文庫)15×24 link four Riders of the Mark City (集英社スーパーダッシュ文庫 し 5-4)15×24link five―ロジカルなソウル/ソウルフルなロジック (集英社スーパーダッシュ文庫)15×24 link six この世でたった三つの、ほんとうのこと (集英社スーパーダッシュ文庫 し 5-6)
当blogの読者様であれば予想はついていたかもしれませんが(笑)、1位は新城カズマ15x24』です。
9月からの4ヶ月6巻連続刊行、twitterを利用したプロモーション、物語世界を再現したARG(代替現実ゲーム)の展開など、ライトノベル史上初ともいえる試みを多々行っており、小説という枠を超えた挑戦は非常に興味深かったですし、物語そのものも「死」を描きつつなお逆説的に「生きる」ことを15人の姿を通して描いた傑作だと思います。
link one 「せめて明日まで、と彼女は言った」書評
link two 「大人はわかっちゃくれない」書評
link three 「−−−裏切者!」書評
link four 「Riders of the Mark City」書評
link five 「ロジカルなソウル/ソウルフルなロジック」書評
link six 「この世でたった三つの、ほんとうのこと」書評



昨年に比べると読書量が落ちたものの、研究記事を多々アップしたりと個人的には満足した年でした。
音楽サークル漫画のグラデーション - 三軒茶屋 別館
あずまきよひこの出した「応用問題」(前編) - 三軒茶屋 別館あずまきよひこの出した「応用問題」(後編) - 三軒茶屋 別館
秋期集中講義 よくわかる「物語工学論」 - 三軒茶屋 別館
また、非常に個人的な話になりますが、ポメラを使い始めたことで隙間の時間を縫った記事更新を行うことが出来ました。実際、ポメラ購入後のフジモリの記事は8割がたポメラで書いています。
もし我が家のポメラが美少女化したなら今年の労をねぎらうため夜を徹してマッサージしてあげたいぐらい大活躍したと思います。
ポメラニアンへの道 - 三軒茶屋 別館
来年も今年と同じく趣味の本を趣味で取り上げる趣味全開の書評サイトとしてぼちぼちと更新していきますが、読者様が当blogを通じて新たな本との出逢いが一つでもあれば望外の喜びです。
当blogの読者様も来年もまた素晴らしい本たちと出逢えますように。

それでは皆さん、よいお年を。