新城カズマ『15x24イチゴーニーヨン link six 「この世でたった三つの、ほんとうのこと」』集英社スーパーダッシュ文庫

15x24』、この巻を持ってとりあえずの完結となります。
「とりあえず」というのは別に含みを残して続編に続く、というわけではなく、彼ら彼女らの物語はこの巻以降も続いていくからです。
シリーズ通しての書評は改めて書きますので、この巻の感想を中心に。
link one 「せめて明日まで、と彼女は言った」書評
link two 「大人はわかっちゃくれない」書評
link three 「−−−裏切者!」書評
link four 「Riders of the Mark City」書評
link five 「ロジカルなソウル/ソウルフルなロジック」書評
link sixでは、まさに物語の「収束(=終息)」でした。<17>の正体が明かされ、「完璧な場所」もまた明かされます。
晦日の東京を大勢がどたばたするこの広大なゲームは、最後もまた一つの「ゲーム」で幕を下ろします。<17>の正体や完璧な場所、物語の終息については、ネタバレになるため多くは語りませんが、驚愕というほど意外性があるというわけではありませんが納得できる内容だったと思います。
個人的には、最後の「ゲーム」における主人公たちのモノローグが、これまでの長い道のり(そう、それは読者にとっても、です)が走馬燈のようにフラッシュバックし、思わずうるっとしてしまいました。
全てを読み終えた瞬間、「この小説に出会えてよかった」という感想がふと湧き出てくる、そんな小説でした。
ライトノベル史上もっとも長い一日」の言葉がまさにふさわしいこの物語ですが、この小説は「ライトノベル」という何でもありのフィールドだからこそ刊行されたのかもしれません。
この物語は「小説」としても単体で楽しめますが、付帯するプロモーション活動も含めて楽しむことができます。これもまた、「なんでもあり」のライトノベルならではでしょう。
新城カズマ『15x24』ネットでのプロモーションまとめ - 三軒茶屋 別館
ARで「男」を探し出せ――セカイカメラを使った「エアノベル」が大晦日に始動 - ITmedia Mobile
15x24』を一つのゲームとすると、主人公たちがその意味を知ることもなかった謎や現象、はたまた要所要所で登場する人物の名前など、新城カズマの他の作品を読むことで読者が補完し俯瞰できる内容が遊びのようにちりばめられています。まさに「つながっている」という表現がふさわしい作品間の「link」です。
いずれ共有世界に関するまとめwikiなどが登場するでしょうが、自ら調べてみるのもまた楽しいかと思います。
15x24』から新城カズマの作品に触れた方はまず、『蓬莱学園の初恋!』という小説を「探し出す」ことから始めてみてはいかがでしょうか。難易度は高いですが、『15x24』と「つながった」ときの達成感もまた格別です。
長い長い小説かもしれませんが、そのボリュームに見合った読後感とさらなる「遊び」の案内役でもある、個人的にはいろいろな意味でライトノベル史にその名前が刻まれるであろう作品だと思います。ごちそうさまでした。
蓬莱学園の初恋! (富士見ファンタジア文庫)

蓬莱学園の初恋! (富士見ファンタジア文庫)