新城カズマ『15x24イチゴーニーヨン link two 「大人はわかっちゃくれない」』集英社スーパーダッシュ文庫

新城カズマ15x24』2巻です。
新城カズマ『15x24イチゴーニーヨン link one 「せめて明日まで、と彼女は言った」』集英社スーパーダッシュ文庫 - 三軒茶屋 別館
やや1巻のネタバレが入りますのでご注意を。
見知らぬ相手とネット心中を試みる高校生・徳永。
彼の「死」を見たがっている同級生・伊隅。
彼を止めようとしている左右田、在所、深浦、枯野たち「捜索隊」。ただし彼を探す理由はそれぞれ異なる。
1巻ではこの壮大な鬼ごっこの参加者や各自の「勝利条件」が明らかになり、あわや徳永を捕捉か、というところで取り逃がし2巻に続きました。
そして2巻では、この「鬼ごっこ」に更なる登場人物が加わります。
ファブリと名乗るヤクザたちが探す「ピンクのケータイ」。そのケータイの中身を見たら見た人もその内容を聞いた人も「ケア(=この世から消去)」されてしまうほどの重要機密。
単なる自殺志願者を追うだけだった鬼ごっこは、新たなルール追加により途端に「生死を賭けたサバイバルゲーム」に変貌を遂げます。
「捜索隊」の彼らをつないでいた「ケータイ」は彼らの個人情報を手繰り寄せる「捕食者」のツールへと早変わり。この「闇へのステージアップ」が、否が応にも読者に緊張感を持たせます。
絡み合う登場人物の糸はそれぞれの「勝利条件」を変化させ、物語をより複雑にしていきます。
タイトルの『15x24』とは、著者も言っているとおり「15人の24時間の物語」を表しています。次々と登場人物の視点が切り替わりますが、ここまでに登場した人物は、徳永、笹浦、伊隅、渡部、左右田、在所、今市、西、枯野、折口、オサリバン、温井川、藤堂、三橋の14人。そして、「15人目」が登場したところで3巻へと続きます。
2巻では、1巻で読者を「物語世界」に慣れさせたところで一気に物語を加速させ、また物語(=ゲーム)の内容を一変させます。一人称で語られるせいか読みやすいその語り口は、「どうなるのか」という「結果」のみならず、「どうなっていくのか」という「経過」に対し読者の興味を引きずり込み、また感情移入を促しライブ感を増幅します。
加速度あふれる巧みな「引き」。3巻発売までの1ヶ月が待ちきれないほどの「面白い」、そして「読み出したら止まらない」小説です。
新城カズマ『15x24イチゴーニーヨン link one 「せめて明日まで、と彼女は言った」』集英社スーパーダッシュ文庫 - 三軒茶屋 別館
新城カズマ『15x24イチゴーニーヨン link two 「大人はわかっちゃくれない」』集英社スーパーダッシュ文庫 - 三軒茶屋 別館
新城カズマ『15x24イチゴーニーヨン link three 「−−−裏切者!」』集英社スーパーダッシュ文庫 - 三軒茶屋 別館
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