『星図詠のリーナ2』(川口士/一迅社文庫)

星図詠のリーナ (2) (一迅社文庫)

星図詠のリーナ (2) (一迅社文庫)

 日本で唯一の測量専門誌月刊「測量」にも紹介された本格マッピングファンタジー第2弾です。
 ページをめくってまず目に付く登場人物紹介欄にとりあえず目眩が。何もこんなに女性陣ばかり登場させなくても。タルヴはどこ行ったタルヴは(苦笑)。いや、いまどきのライトノベルである以上仕方のないことないことなのかもしれませんが、それにしても……。作中、リーナがお姫様であることにもっと気を使うようにダールが注意を受ける場面が幾度かありますが、こんな軽いメンバー構成で敬意を払えといわれてもいまいち説得力がないような。キャラクタ同士の掛け合いもタルヴがいたほうが面白かったと思うのです。なので、次作が出るならタルヴの復活を強く希望します(笑)。
 その一方で、本書では難民問題や、異種族であるエルフとの貿易問題といったラノベらしからぬ問題が題材となっていて、こうした意欲的な試みは個人的にはとても好印象です。もっとも、題材になっているといってもごくシンプルなものなので少しばかり物足りなさを感じるのも確かではありますが、それこそラノベとしてはこれくらいの扱いでもよいと思います。
 その反面、地図作成のための測量というシリーズの特徴であるべき要素の重要性が、本書ではどうにも低下してしまっている感は否めません。作中で紹介される「天、地、人」という地図作りの基本自体はとても面白いと思うので、そこから一歩踏み出して、地図作りにとどまらない地政学的なお話をいっそのこと指向してしまってもよいような気がしました(←個人的な好み丸出し)。とはいえ、主に寿命の差からくる人間とエルフとの地図観の違いといったものはとても面白く感じましたし、本書程度の踏み込みでもいいのかもしれませんけどね。
 シリーズのファンタジー的側面を支える竜の存在については少しずつ分かってはきたものの未だ詳細は不明で興味を誘います。それはよいのですが、戦闘面での竜の活躍があまりにも圧倒的で、それでいてあまりにも便利すぎて少々乗り切れない気もします。全体的に地味で堅実なお話なのに、こんなところで華美にしなくてもよいと思うのですけどね(笑)。
 なんやかんやいっても主要キャラクタの掛け合いや微妙な距離感は読んでて楽しいですし、物語がどんな方向に進むのかも非常に興味がありますので、続きに期待したいと思います。
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『星図詠のリーナ』(川口士/一迅社文庫) - 三軒茶屋 別館
『星図詠のリーナ3』(川口士/一迅社文庫) - 三軒茶屋 別館