小林賢太郎・升野英知『大喜利猿 北海道』河出書房新社

大喜利猿 北海道

大喜利猿 北海道

小林賢太郎ラーメンズ)と升野英知バカリズム)の二人が延々と「大喜利」を行うライブ、「大喜利猿」の書籍版です。

寄席で、トリを落語・講談が取らない場合、しばしばその代りに行われた演芸。複数人でおこなわれ、お題をうけて小咄やなぞ掛けなどを行うことが多い。
大喜利-wikipediaより

本書は北海道で行ったライブの書籍化、ということで、既刊で2冊出版されています。
ほんとに、延々とお題と回答が続く大喜利です。二人のファンなら買いですが、どちらかというと読み手を選ぶ本かもしれません。
とはいうものの、大喜利で求められる「笑いの瞬発力」を参考するにあたって、非常に勉強になります。
7月6日に大阪で行われたライブ「大喜利猿」を観てきたのですが、面白かったのと同時に「うーむ」と唸らされました。
ライブでは、その場のお題に対し、二人が即興でイラストや文字で回答していきました。イラストを描いている間の妙な沈黙が緊張感をいやがおうにも煽ります。回答も、微妙なものは容赦ない愛想笑いが与えられるという、「自分が同じ立場だったら間違いなくストレスで全身脱毛する」ぐらいの状況でした。
彼らの笑いは「共有知」に頼らない笑いが多く、久米田康治いうところの「狭くて深い笑い」と真逆をいっています。「専門知識(芸能ネタやスポーツネタ、アニメ・漫画ネタなど)を必要とするネタを使わず客を笑わせる」というのは、これはこれで非常に難しく、ひとしきり笑った後に彼らがどのような答えを言ったかを客観的に勉強させてもらいました(笑)。
また、本書「大喜利猿」では回答のみの掲載ですが、実際のライブではしゃべり方や掛け合いによる相乗的な笑いもありました。逆に言うと書籍に掲載されているのはそういった付加情報のない「回答」なわけで、ライブ以上に「笑わせる」難易度が上がっています。
もちろん、笑いのツボは人それぞれですので本書で笑えるか笑えないかは手に取ってみないとわからないでしょう。
しかしながら、回答の法則性や方法から「笑いとはなにか」を客観的に学び取るテキストとして非常に興味深い一冊だと思いました。