『人類は衰退しました 4』(田中ロミオ/ガガガ文庫)

人類は衰退しました 4 (ガガガ文庫)

人類は衰退しました 4 (ガガガ文庫)

 シリーズ4冊目です。今回は中編が2本収録されています。

妖精さんの、ひみつのこうじょう

 一見するとほんわかファンタジーな世界観のようでありながら、衣食住といった生活面でのリアリティには妙にこだわっているのがこのシリーズの面白いところです。物語の冒頭から主人公の女の子がニワトリの屠殺を迫られるお話というのもなかなかないと思います(笑)。
 なんやかんやでニワトリを逃がしてしまい、探して捕まえようと思ったら何故か加工済みの走るチキンを目撃してしまい、何が起きているのかと思ったらそこには「妖精社」なる工場が……。というようなお話です。
 どこか楳図かずおの『14歳』(参考:Wikipedia)を思わせるシュールな展開に加え、走るチキン=チキンランチキンレースなオチには失笑を禁じえません。作中で助手さんが描いているネガティブ絵本の元ネタはおそらく『ギャシュリークラムのちびっ子たち』(エドワード・ゴーリー河出書房新社)で、他にも聖書ネタとか混じってて、なんだか作品全体の雰囲気がつぎはぎみたいな感じです。作中の合成パンの説明じゃないですが、ローコストで栄養バランスのよい優等生的なお話っぽさで作者に誤魔化されてる気もします。
 もっとも、物語の語り手である”わたし”の考え方自体が、事件を根本的に解決するために努力するというよりは、とりあえず適当に誤魔化してでもその場を乗り切れればいいやという一時しのぎ的なものです。そうした語り手のスタンスと物語の展開とのシンクロが、妖精さんの適当な物語を成立させている秘訣じゃないかと思ったりしました。

妖精さんの、ひょうりゅうせいかつ

 なぜか(?)クスノキの里にだけ妖精人口の世界一の過密地帯になってしまい、おまけに最近妖精さんの様子がそこはかとなくネガティブで。そんな事態を解決するため、”わたし”は妖精さんを引き連れて出張することになりますが、そしたら赴任地で無人島に辿り付くはめになってしまい……。というようなお話ですが、とりあえず生態不明のはずの妖精さんの人口密度ってどうやって測定したんでしょうね? 私、気になります。
 衣食住の解決とかは何から何まで妖精さんの力を借りることになりますが、食については前のお話を引きずってる部分もあります。普段とは違って”わたし”が凹み気味の妖精さんたちを元気付けながら、それでも生活面ではやっぱり普段どおり妖精さんに助けてもらいっぱなしです。そうして次から次へと要求をエスカレートさせていったところで迎えるお決まりのドラえもん破局。いや、確かにそりゃそうですけど、化学やら物理やら生物やらのいろんな法則を無視してきたくせに、根本的な法則は無視しちゃ駄目ということですか。ま、楽しいからいいんですけどね(笑)。
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