映画「スカイ・クロラ」感想

 映画「スカイ・クロラ」観てきました。遅くなりましたが感想を書きたいと思います。
 8/2(土)公開初日。万難を排して1人で観ることにしました。実は恥ずかしながら、押井映画を観るのはこれが初めて。事前情報をある程度シャットアウトしてきたので、どのような映画になるのか非常に楽しみでした。
(以下、軽くネタバレを含みますので事前情報無しに観たい方は読まないほうが吉です)
 いきなりの空中戦。「ずっと俺のターン!」ばりのティーチャーの一方的な強さが際立ちます。音、映像含めとにかく迫力があり、一気に作品世界に引き込まれました。
 オープニングのスタッフ紹介が終わり、いよいよ本編に。カンナミが赴任してくるところから物語は始まります。整備士のササクラが女性なのには軽く驚きを覚えましたが、まあ拒絶反応というほどの違和感がないので良しとします。カンナミ、クサナギの声はやや朴訥な感じがしましたが、あえて感情を排し「人形っぽさ」を出しているのかなぁ、と納得。徐々に慣れてきました。
 ストーリィそのものは原作である『スカイ・クロラ』をなぞっていきます。同僚のパイロットたちの描写など、ところどころ付加されたエピソードもありますが、結構原作に忠実かな、と思いました。
 そして空中戦。圧巻です。散香やスカイリィがリアルに再現されており、その攻防に思わず息を飲みます。と、同時に、原作を読みながらフジモリが想像していた空中戦には「音」が全く無かったと気づかされました。
 森博嗣の文体もあいまってか、彼ら(彼女ら)は非常に軽やかに空を飛んでいるイメージがありました。しかしながら、実際はこの映画のように爆音と激しい動きの応酬なのでしょう。一方でその「音」は地上には届かないことでしょう。「ショーとしての戦争」という言葉が否応無しに頭に浮かびました。
 密度の濃い空中での物語と、夢を見るかのようにゆるやかでぼんやりとした地上での物語。原作が原作なだけに、気を抜くと簡単に物語に「置いて行かれ」ます。とはいうものの、原作未読者をサポートするかのような説明もところどころにあり、全体的にわかりやすかったと思います。
 オリジナルの結末については、「なるほど、こういう解釈をしたか」と素直に感心しました。物語の軸を「永遠の生を生き、永遠の戦闘を繰り返すキルドレたち」に据えたとき、この結末に行き着くのは必然であるかもしれません。フジモリは原作から映画に入ってますし、原作全6巻を読み「真のエンディング」についてもある程度把握はしていますが、これはこれで「あり」かなぁ、と思いました。
 全般的に、エンタテイメント要素を排した非常に「ストイック」な映画だな、と感じました。映画館でみんな一斉に笑うシーンも無く、泣くシーンも無い、ただただ心にふわっとした「余韻」が残る、そんな詩的な映画だったと思いました。
 とはいうものの、内容は原作未読な方には意味不明で終わる可能性もありますし、カンナミやクサナギの声に拒否反応を起こす方もいると思います。
 オススメできるか、と言われたら「NO」と胸を張って回答しますが(笑)、少なくともフジモリにとっては非常に楽しめた作品でした。