『ドラッケンフェルズ』(ジャック・ヨーヴィル/HJ文庫G)

ウォーハンマーノベル ドラッケンフェルズ (HJ文庫G)

ウォーハンマーノベル ドラッケンフェルズ (HJ文庫G)

アイヨシの書評『ドラッケンフェルズ』(三軒茶屋本館)
 ジャック・ヨーヴィルは『ドラキュラ三部作』(参考:書評『ドラキュラ紀元』)で知られるキム・ニューマンの別名義です。本書はそのジャック・ヨーヴィルが書いたTRPG『ウォーハンマー』の世界を舞台とした小説です。以前、角川文庫から安田均と笠井道子の訳で刊行されまして、それを読んだ私はそれはもう大いに感動しました。当時本書を傑作だと思ったのは私だけではないらしく、事実、復刊ドットコムでも130という異例の投票数を集めています。それくらい人気を博した作品です。しかしながら、長らく絶版で入手困難な状態が続いておりました。それがどういう風の吹き回しか(笑)、昨年HJ文庫から新訳で復刊されて、しかもその後の作品もジュヌヴィエーヴ・シリーズとして併せて刊行されました。奇跡です。もっとも、見た目は16歳の美少女だけど実年齢は本書の時点で638歳の吸血鬼というアンバランスな設定は、日本なら萌えキャラとして自然に受け入れられても不自然なものではないとの判断があるかもしれませんけどね。『魔法先生ネギま!』のエヴァンジェリンみたいなキャラが好きな人には問答無用でオススメしておきます(笑)。
 嬉しいことは嬉しいのですが、絶版本をひそかに大絶賛する喜びが失われてしまい、名作が皆に知れ渡ることで自分のものだけではなくなってしまう悲しみの気持ちがあるのも否定はできません。人間って哀しい生き物ですよね(笑)。
 復刊作品なので、上記リンク先の書評さえ読んでいただければ、それ以上特に何も言うことはありません(笑)。昔読んだときのインパクトが強いので新訳に違和感を覚えてしまうのは仕方がないところではありまして、実際に読み返したときに多少のぎこちなさを感じたのは確かですが、ページをめくるうちにストーリーの記憶がフィードバックしてきたこともあるでしょうが、すいすいと読み進めることができました。やはり傑作です。
 ただ、本書の構成があまりに見事で結末も鮮やかなものであるだけに、この後にシリーズとしてどのように続いていくのかが興味深くもありますし正直不安でもあります。しかし、仮にシリーズものとしての続きがイマイチなものであったとしても、本書が名作であることに変わりはありません。オススメです。
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