株式会社レッカ社『永遠のガンダム語録』PHP文庫

ガンダムを知らずに、僕らは生まれた。『永遠のガンダム語録』

永遠のガンダム語録 (PHP文庫)

永遠のガンダム語録 (PHP文庫)

 名言・格言を引用する場合、ちょっとした注意が必要です。
 例えば武田信玄の旗印「風林火山」は中国春秋時代孫武が書いた書物から、リンカーンゲティスバーグ演説で発した「人民の人民による人民のための政治」はジョン・ウィクリフの翻訳した聖書の序言が元ネタといわれています(参考:wikipedia)。コピペで簡単に名言を引用できる昨今、「オリジナル」の存在に注意と敬意を払わなければならないという考え方はあったほうがいいかな、と個人的には思っています。
 フジモリは「初心者のための使えるジョジョ語」という記事を書きましたが、これは「AAやコピペテンプレートのみでオリジナルを知らない」方々に対し「オリジナルの名言」と「引用元」を明確にしたい、という思いもありました。
 同様に、名言が多い(と思われる)作品として「機動戦士ガンダム」が挙げられます。「親父にもぶたれたことがないのに!」とか「悲しいけど、これ戦争なのよね」とか「原作を知らないけど名言は知ってる」という人も多いのではないでしょうか。
 漫画や小説の場合、名言の引用は「○○の○ページ」とすぐに確認が可能ですが、アニメの場合「第○話の○○のセリフ」と確認するにはけっこう手間暇かかってしまいます。
 この本は「機動戦士ガンダム」「機動戦士Zガンダム」「機動戦士ガンダムZZ」「劇場版機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」の名言をピックアップし、ライターがコメントを添えています。
 アニメ「機動戦士ガンダム」の初回放送が1979年(昭和54年)ですから、当然ながら「初代ガンダムを知らない世代」は増加の一途をたどるでしょうし、そういった人たちに「原作のアニメを全話観ろ!」とマッチョイズム全開な押し付けをするのも酷だと思います。
 しかしながら一方でオリジナルに対し理解をもってもらうためにも、この本はうってつけの材料かな、と思いました。
 とはいうもののこの本を参考にする時点で孫引きになってしまいますが、少なくとも「正しい言葉」は引用できるのではないでしょうか。
 フジモリもリアルタイムでガンダムを観ていませんが、数多くの名言を読んでこのアニメが今なお語り継がれている理由を垣間見た気がします。個人的には「ジョジョ」「ガンダム」「島本和彦」が名言御三家かなぁ、と思ってたりしていますが、改めて「言葉」の力を感じることが出来ました。
 三段活用的に。

「認めたくないものだな…自分自身の若さゆえの過ちというものを…」シャア・アズナブル、『機動戦士ガンダム』、第1話)
「人は変わっていくのね」ララァ・スン、『機動戦士ガンダム』、第41話)
「これが若さか…」クワトロ・バジーナ、『機動戦士Zガンダム』、第13話)



 もう一つのこの本の楽しみ方として、「リアルタイムにガンダムを観た世代の生の意見」があると思います。録画技術やレンタル、画像配信が発達した今でこそ「アニメを放映と同時に見る」という概念は薄れつつありますが、リアルタイムに毎週物語を観て、それに対し視聴者はいろいろ考えるわけです。いま同じように見ても当時の人と同じ感想を持つことはまずないと思いますが*1、「当時の人はどう思っていたか」を知ることが出来るという意味でも貴重な文献になると思います。
 読み物としてだけではなく、資料として重宝する一冊です。

 余談ですが、比較対象の為に『機動戦士ガンダム語録』(株式会社カンゼン)も購入しました。
 編著者が同じ(株式会社レッカ)であり、名言に対しライターがコメントを書くのも一緒。『永遠の〜』は4作品から150のセリフを、『機動戦士〜』は『機動戦士ガンダム』のみから100のセリフを抽出するなど若干の差異はありますが、どちらかお好みで選べばよいかと思います。
機動戦士ガンダム語録 (永遠のガンダムシリーズ)

機動戦士ガンダム語録 (永遠のガンダムシリーズ)

*1:「初めて遊ぶゲーム機がプレステ」という子供がファミコンを遊ぶのと、「リアルタイムでファミコンを遊ぶ」のとでは、同じゲームに対し思いが全く異なるのと同じようなものです