書評サイトの醍醐味

 フジモリの書評サイト論に便乗ー。
 うちは一応書評サイトで、ジャンルとしては雑食ながらもミステリがメインのつもりなのですが、『あわせて読みたい』を参考にすると、どうもラノベ系と親和性が高いらしくて、ひょっとしたらそんな風に認知されているのかもしれません。ま、それならそれで別にいいのですが。そんな書評サイトの中の人が考える書評サイトの醍醐味です。
(以下、どちらかというとこれから書評サイトをやってみようかと思っている人向けの記事です。わりかし長文です。)
ライトノベル感想サイトは流行りにくいけれど - 平和の温故知新@はてな
http://d.hatena.ne.jp/iris6462/20070731/1185888953
 競争相手を減らすという意味では、こういう諦観的な見出しの論に乗っかった方がいいのかもしれません(笑)。しかし、私自身の意見としては、
書評サイトを流行らせようよ: 304 Not Modified
 こちらのポジティブな意見に近くて、もっと言えば、書評(感想)サイトって流行る方なんじゃないかとすら思ってます。何と比較して? というのはあるのですが、流行る流行らないは別にしても、頭の中にある考えを人に見せるのを前提にして文章に起こしてみると、そこには意外な発見があったりします。それに、検索サイトとかで読んだ本の感想を探してみると、自分の読み方と同じ読み方をしている人が見つからないときがあります。そんなときに、自分にとっては普通だけどよそとは違う読み方をネット上に晒すというのは、仮に反応がなくてもそれなりのスリルや満足感があって楽しいです。また、知名度は低いけどとても面白い本を発見したときに、ネット上で「もっと読まれればいいのにー!!」と声を上げるとちょっとしたストレス発散になります(笑)。
 当サイトは別に大手でもないし知名度だってたかが知れてますが(多分)、それでもアクセスはそこそこありますし、コメントやトラックバックといった反応もあります。読書という本来内向きであるはずの行為によって他の人の考えに触れることができるというのはネットがくれた新たな読書の楽しみ方です。正直かなり満喫しております。*1
 そもそも、サイトを開設してみようかと考える場合に、年がら年中本を読んでる人にとって書評(感想)サイトというのはもっとも始めやすいコンテンツのはずです。私たちがまさにそうですが、やって見れば本の読み方・楽しみ方がぐっと広がりますから是非オススメしたいです。嫌になったらやめればいいだけです。そんなわけで、やってみたいと思う方は尻込みせずにやって欲しいと思いますが、個人的に気を付けて欲しいと思う点があったりします。
1.「古本屋で買った」とか言わない
 いや、買ってもいいんですよ(私自身のポリシーとして新刊で買えるものは新刊で買うようにしてますが)。ただ、それを書評サイトで言われてると正直萎えます。いいこと言ってるサイトでも引きます。ましてやアフィリエイトするなら論外です。書評サイトは、よく言っても作者の寄生虫でしかないので、作者さんに作品を書き続けてもらうためにも、作者さんにお金が入る仕組みは大切にして欲しいです。ただこれには大事な例外がありまして、品切れ絶版になってしまってる本については古本屋でしか買えないことを全面的にアピールすべきです。そうした動きがひょっとしたら良作の再発見・復刊につながるかもしれませんからね。そういう意味で「図書館で借りた」はライン上、「友人から借りた」はぎりぎりセーフだと思ってますが、これは潔癖に過ぎるでしょうか?
2.よその書評・感想を紹介する
 「情けは人のためならず」と言いますが、自分のに触れてもらいたいと思ったらまずは自分からそういう姿勢を見せた方がよいでしょう。同業者の書評を紹介するのもプライド的にどうかと思いますが(苦笑)、いいものは素直に認めて紹介することで本の読み方も多様になりますし、自分自身の書評のレベルアップにもなります。それに、そういう姿勢があった方が敷居が低くなってコメントとかの反応ももらい易くなると思います。最近だと、雲上四季さんのこうした試みにこっそりと注目しております。私にはとてもここまではできませんが(やるとしたらもっと過激になっちゃいそうで)、興味をひかれた書評とかはできるだけ紹介するように心がけてはいます。
3.「毎日続けよう」とか思わない
 書評(感想)はインプットなしには成り立たないものです。ある程度の期間続けようと思ったら書評自体は1日おきとかになっても当然だと思います。うちなんか3人でやってるのに更新のない日がありますしね。アハハハハ(←駄目じゃん)。もしこれから書評サイトを始めてみようと思われる方がいらっしゃいましたら、その前にある程度書評を書き溜めておいてそれを少しずつアップしつつ、ときどき新刊の書評を適当に混ぜるなどしながら計画的に更新していく、というのを理想としてオススメします。もっとも、最初のうちはやる気満々なので書きたいこともオススメしたい本もたくさんあるのであまり気にならないかもしれません。ただ、1年くらい経つと苦しくなってくるので、さぼっちゃう前に積極的に休みましょう(笑)。それに、書評サイトだから書評しか書いちゃいけないということもないので、何か他に書きたいことがあったらそれを書くのも良いでしょう(実際うちは書評以外の記事でアクセスを稼いでますし)。

 他に何かアクセスにつながることが書ければいいのですが、なんでしょうね? 新刊の書評は一応アクセスが見込めるというのはありますが、急ぎすぎると中身が薄くなるので気を付けたいです。それに、何がウケるのかというのは正直まったく分かりません。創元SF文庫での刊行に合わせて始めた銀河英雄伝説の書評も、最初の頃はさっぱりでしたが、ラノベ定義論との絡みで注目され出したら(参考:銀英伝とライトノベル)途端にアクセスが増えました。こういうのも書評サイトの楽しみのひとつです。今までの書評ネタでニュースサイト入りしてダントツにアクセスを稼いでいるのは『巨船べラス・レトラス』の書評ですが、これは朝日が筒井作品を誤読のうえダシにしてラノベ批判と独自の見出しを付けられて紹介していただいたからです。見出しというのはニュースサイトさんとの関係ではとても大事です。大事ですが、難しいです(関連:書評サイトの憂鬱(見出しについて))。あと、単体としての本の紹介よりも、ミステリとライトノベルの『四大奇書』『スレイヤーズ!』とクトゥルフ神話といった広い考察の方がアクセスはあります。また、シリーズものはそれに興味のある方には全部読んでいただけるのできちんと追うのがセオリーでしょう。
 ま、やって見ればそれなりに難しいところもあるのですが、トータルで考えれば面白さの方が大きくて、お陰様で続けてこられています。もし当サイトをキッカケに書評サイトを始めてみようと思われる奇特な方がいらっしゃいましたら、ご一報いただければお邪魔させていただきますよ(笑)。
【関連】個人サイトって自営業と似ている。 - 三軒茶屋 別館

*1:もっと具体的に言うと、うちのブログがスタートしたのは昨年末からでまだ1年経ってません。ただ、うちは本館のサイトがまずあって、ここはその本館の1コンテンツに過ぎないのでゼロからのスタートではなかったのですが、ブログ開始当初は1日100HITあるかないかでした。それが今年1月から8月までの1日辺りの平均アクセスは1100HITです。もっとも、これは数字のまやかしです。実際にはジョジョとかハチワンとかの書評以外のネタがニュースサイトさんに取り上げられて大ヒットしてるからなのでそれは抜きにしなければなりませんが、それでも1日平均5〜600HITは普通にあります(ありがたやありがたや)。上を見れば切りがないですが、この数字は書評サイトを続けるモチベーションとして十分なものだと感じてます。仮定の話をしても意味がありませんが、これが日記とかだったらどうでしょう。うちらの気質からして、おそらく三日坊主で終わってると思います(笑)。本読みにとって書評(感想)サイトというのは続けやすいコンテンツです。また、お陰様でブログや掲示板に定期的にコメントといった反応をいただいてますし、その中にはかなり濃いものもあります。そうした作品についてのやりとりは読書家冥利に尽きるというものです。ときにはメールまでいただきますし、そのあまりのレベルの高さにフジモリなど真っ青になっております。トラックバックも大歓迎です。