別館号外さんちゃ0145号

『赤朽葉家の伝説』とダイイングメッセージの信用性 - アニメキャラが行列を作る法律相談所withアホヲタ元法学部生の日常
 ダイイングメッセージについて、a.被害者の意思が明確に伝わるもの、b.そのままでは意図が不明確なために謎解きが必要なもの、c.加害者他第三者の意図が加えられているもの、などなどミステリ内における機能的な分析・類型化は結構頻繁に行なわれていますが、法律上の扱われ方、証拠としての信用性といった観点からの分析は私は初めて見ましたので、とても新しいアプローチだと思います。警察官が活躍するようなリアル志向なミステリでもダイイングメッセージという人工的でパズルチックなテーマは意外と好んで使われているように思うので、意識しながら読んでみると面白い発見につながるかもしれませんね。
 ミステリを法律的に分析するとたまに面白い読み方ができることがあります。私が今までアップしてきた書評の中だと上遠野浩平『海賊島事件(ネタばれ書評)』などが顕著な例です。ただこの書評、仲間内での評判は悪くないのですが、反面、気を悪くされるファンの方もいらっしゃるかもと思うとちょっと恐ろしくもあります。それゆえ、こういう書評の場合には躊躇するときも正直あります。いや、結局は書くんですけどね(笑)。ただ、あくまでもネタなので広い心で読んでいただければ幸いです(もちろん、内容への突っ込みは大歓迎ですよー)。



命奪わず勧善懲悪を 京極夏彦さん、『巷説百物語』刊行(asahi.com)
 『前巷説百物語』刊行についてのインタビューです。

 作中で非人という言葉を使う。「不愉快に思う人が一人でもいるなら言葉は言い換えた方がいい。でも、娯楽作品といえども、あったものをなかったかのように無視するのはおかしい。非人頭という役職、そうした社会構造があったのは事実。それ以前にそうした人たちは生きていて、文化だってあったわけで」

 この発言は、有川浩『図書館危機(プチ書評)』で扱われているある問題に対しての回答の一つでしょう。低く扱われがちな文化に対しての高い意識がそれを扱う作品の質もグッと高めるのだと思います。



離婚後300日特例措置、きょうから市区町村窓口で開始(YOMIURI ONLINE)
 ということで、以前書いた記事、民法772条についての私的まとめに以下の文章を追記しておきました。

 上述の問題について、2007年5月21日から離婚後の妊娠が確認できれば、再婚していれば「再婚相手の子」、そうでない場合は「非嫡出子」としての届出が受理されることになりました。法務省通達による特例措置です。これだと離婚前にすでに事実上の婚姻関係が破綻している状態において再婚相手の子を懐胎した場合などは対象外なので救済範囲は限られたものになるという指摘はありますが、それでもゼロということもないでしょうから一定の評価はするべきなのかもしれません。しかし、法務省という法の遵守がもっとも求められる立場にある省庁が、法律上の問題を通達で解決しようとすることには正直疑問を覚えます。法律に問題があるのなら改正すべきでしょうし、そうしないのであればあくまで法の遵守を促すのが法務省のあるべき姿じゃないでしょうか?