今野緒雪『マリア様がみてる あなたを探しに』集英社コバルト文庫

 長らく引っ張ってきた祐巳の妹問題も今作で決着。いやー長かったです。
 前作で祐巳に告白をした瞳子ですが、なぜかそのあと行方不明になってしまいます。
 タイトルの「あなたを探しに」の通り、1冊まるまる使って祐巳瞳子を探します。
 途中、聞き込みで情報を得るところなどは推理小説を読んでるかのように、伏線が巧みに張り巡らされています。再読するたびに「あ、このタバコ屋のおばあちゃんのセリフはこういうことだったのか!」などと新たな発見があり、作者、今野緒雪の構成力に舌を巻きます。既読の方はご存知かと思いますが、まさか、前々巻『大きな扉 小さな鍵』の 「お兄さま、おしっこ!」にああいう意味が隠されているとは思いもしなかったです…。
 物語の終盤で、祐巳瞳子を見つけることができず、失意のうちに自宅に帰る途中で、とあるお店に立ち寄ります。(前巻『クリス・クロス』で祥子さまが祐巳にプレゼントしたチョコレートを売っている店です)
 そこで、アルバイトをしている瞳子に出会うシーンは、ほんと、鳥肌ものでした。縦ロール(ドリル)をほどいているだけで瞳子の印象がこんなに違うのかという祐巳の驚きと、彼女を捜索する前に瞳子が居たはずだったのに視認していなかったという叙述トリックが、それまでの彼女の縦ロールに関する情報と繋がり、読者に「ああ、そういうことか!」と大きな驚愕とカタルシスを与えてくれます。
 最後に祐巳が渡したロザリオを再び巻きなおした縦ロールの中にしまうときの瞳子のセリフ、
「私、もうこの縦ロールをほどきません。祐巳さまとの、絆ですから…」
 を読んだ瞬間、「ああ、二人の関係に一段落ついたんだな」、と思い不覚にも涙してしまいました。
 ターニングポイントでもある一作であり、作者の新たな一面(特にミステリ部分)が開花された巻でした。
 あ、念のため。
(反転ここから→)これも当然エイプリルフールの嘘ですよ(←ここまで)