M.G.H

 ネタがないのでプチ書評ー。

『M.G.H.』(三雲岳斗徳間デュアル文庫

 いろんな書評・感想をネットで漁ってみましたが、そのほとんどが森博嗣の影響について触れてます。それも読めば納得で、思わず「フジモリの『すべてがFになる』の書評まだー?」って言いたくなるくらいです(笑)。
 実際、犀川を思わせる主人公に萌絵を思わせるヒロイン、舞台となるクローズドサークルへの移動の経緯や真賀田四季を思わせる博士の登場、仮想空間でのあり方などなど、確かに『すべてがFになる』みたいです。個人的にもっともそれが顕著だと思うのが、どちらもタイトルがトリックを表象しているという点ですね(ネタバレ?)。
 とは言いつつも当社比ではありますが、好意的な書評・感想がほとんどだったと思います。それは本書が単に『すべてがFになる』の二番煎じではないからです。『すべF』よりもSF色が強いというのがまずあります。実際、本書は第1回SF新人賞受賞作ですし。
 それとトリックですね。殺人事件は2つ発生するのですが、1つ目のトリックはなかなかユニークで壮大なものですし、2つ目の方は逆転の発想がこれまた面白いです。
 犯人の動機が個人的にすごい納得できちゃうのですが、それって人間的にダメですか?(笑)
 SFミステリとして気軽ながらもコクのある読後感が味わえる割とオススメの一冊です。

 ところで、一言でSFミステリと言っても、本書や『女王の百年密室』みたくSFとしても成立しているミステリと、『七回死んだ男』みたく実際はSFとしての成立は微妙ながらも超自然的な条件を加味することで独特の論理展開を生み出しそれを楽しむタイプのミステリの2種類があるわけですが、単に”SFミステリ”だとその2つの区別が難しいんですよね。木津千里じゃないですが、私はこういうの気になるんですよねぇ。何か良いアイデアはありませんでしょうか?