木村航『串刺しヘルパーさされさん〜呪われチルドレン〜」HJ文庫

 ホビージャパンから新たに出たラノベ文庫ですが、フジモリが追っかけている木村航作品なんで読んでみました。
 呪われ者の中でもひときわスペシャルな呪いを受け「菊級呪感者」と呼ばれる佐々岡支恵こと「さされさん」は、胸に大きな剣が刺さった串刺し娘であり、ホームヘルパー。今回派遣されたのは「呪われ屋敷」と呼ばれ三兄弟全員が呪われ者の家で…という話。
 「ぺとぺとさん」に代表されるように、木村航は「妖怪」「呪い」「追放者」と主人公に大きなハンデキャップを課す作品が多いです。フジモリが以前論評していますが本来「ハンデキャップ=困難」とは主人公が克服するためのものであり(これを「竜退治」と模しています)、その過程が物語の原動力となるものですが、木村航は困難の克服を物語の目的とせず、「あなたの抱えている困難は、自分(=主人公)の困難に比べれば小さいものだ」という、「困難を抱える登場人物の解決策」として利用しています。
 この作品でも、大きな呪いを受けているさされさんがその呪いを苦にせず、他の呪われた登場人物に対し、「そんなの小さい小さい!」と悩みを吹き飛ばしていきます。その痛快さが読むものにカタルシスを与え、気持ちを前向きにさせる、そんな話だな、と思いました。
 木村航作品が好きな人なら読んで損は無い一作かと。