竜騎士07が語る”探偵小説とミステリー小説”について

竜騎士07:いろいろと筋が合わないよね。それでまた、読者によってある程度見解が分かれているし。あれこそミステリーですよ。読んだ後、我々に思考を楽しむ余地を与えないミステリーというのは、個人的には探偵小説だと思っています。作中の登場人物が勝手に解決してくれるので、我々は「この主人公スゲー」と、手を打つだけですから。このときに「主人公よりも先に真相にたどり着いてやる!」と挑むのは、探偵小説のミステリー的な楽しみ方ですね。対してミステリー小説は、ただ読むだけでも読者に思考することを促す作品のことだと思います。昔よくあった、真相が袋とじになっているミステリー小説は、少々狙いすぎですが正しいのかなと。『かまいたちの夜』も、プレイヤーが考えて選択肢を選ばなければ真相にたどり着けないので、立派な推理小説でしょう。そう考えると『相棒』は探偵ドラマであって、推理ドラマではないですね。探偵ドラマでは“探偵が何かを見つけた”という伏線は張られても、“何を見つけたのかは視聴者に見せない”ということも結構あります。それを見せるか見せないかが、ミステリー作品か否かの分岐点ですね。
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 探偵小説も推理小説もミステリー(小説)もミステリ(小説)も特に断りのない限り普通は同じものを指しているわけですが*1、さりとて、一度こだわり始めるとそれぞれに微妙なニュアンスの違いがあるのも確かですし、そう考えると竜騎士07が言ってることも分からないではないです。
 何はともあれ、まずは落穂拾いから。
(以下、長々と。)

*1:例えば、『探偵小説と記号的人物』(笠井潔東京創元社)所収の笠井潔巽昌章の往復書簡「本格ミステリ往復書簡」では、笠井は「探偵小説」、巽は「推理小説」を用いていますが、『ここで、用語の不統一についてお断りしておきます。笠井さんは「探偵小説」とお呼びですが、私は「推理小説」を慣用しています。今回の意見交換については、この点、とりたてて指示する対象が異なっているわけでもないので、私の方はやはり「推理小説」を使うことにいたします。』(p246より)ということで、以後の議論も滞りなく進行しています。ただし、こうした断りがなされるということは、批評のテーマによっては用語の違いが見解の違いを表す場面もあり得るということでもありますので、気をつける必要もありますが。

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