穂積『式の前日』小学館フラワーコミックス

式の前日 (フラワーコミックス)

式の前日 (フラワーコミックス)

 発売3日で早くも増刷、多くの「難民(=入手不可能な人々)」を生みだし、『このマンガがすごい!2013』の少女マンガ部門2位に躍り出た、新人・穂積のデビューコミックスです。
 なにやら表題作が当時かなり話題になっていたようで、本作が発売されたときに「発売前から話題沸騰!」との店頭POPが。おかげで、天の邪鬼なフジモリは「あえてスルー」した結果、売り切れ店続出で入手までに2ヶ月以上かかってしまいましたよ!(←逆ギレ)
 本作、『式の前日』は表題作を含む短編が6編、集録されています。
 結婚式前日の男女の何気ない生活の一コマ、父と娘とのひとときなど、6編全てにおいて「人と人」二人の関係性を主軸に書かれています。親子、兄弟、見ず知らずの他人・・・。
 帯に「68億分の2の奇跡」とあるように、「二人」のなにげない会話ややりとりに、彼ら、彼女らの積み重ねてきた「歴史」が垣間見えます。
 生活感あふれる精密な描写がそのリアリティを補強し、「二人の歴史の中の一部分を切り取った」ような風景を鮮やかに描写します。
 若干ネタバレになるかもしれませんが、フジモリは本作を読みながら、ミステリ作家の「加納朋子」が重なりました。
 さらりと含まれる意外性のあるどんでん返しや、日常と非日常を軽やかに飛び越え、行き来する世界観。そしてなにより、登場人物たちに向けられる作者の温かいまなざし。
 読んでいて温かな気持ちになりながらも、その完成度に思わず唸ってしまう。まさに看板(宣伝)に偽りなし、の要注目な新人だと思います。オススメです。