痛快な毒々しさ カレー沢薫『アンモラル・カスタマイズZ』
- 作者: カレー沢薫
- 出版社/メーカー: 太田出版
- 発売日: 2012/12/06
- メディア: コミック
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風俗情報誌『風俗大王』や牛丼雑誌『月刊牛丼』で知られるグリズリー出版が、
社長の思いつきで女性ファッション誌『カスタマイズ』を創刊!
男しかいない編集部は途方に暮れるが、そこに現れたムササビのビッチ!
残念な紅一点・沢尻小雪も加わって、
女性誌『カスタマイズ』は部数を伸ばすことができるのか――!?
(Amazonあらすじより)
内容は、男とモモンガしかいない出版社が女性情報誌を手掛ける紆余曲折をドタバタと描くという、いたってシンプルな内容なのですが、とにかく、1コマ1コマに込められた「毒」がすごい。
「モテ」を追求したり「キレイになりたい」と無理する世の女性どもの理不尽さを怨嗟たっぷりにこきおろします。
「ナチュラルメイクとは自然に見せるために膨大な時間をかけたメイクのことたビー」
「全然ナチュラルじゃねぇ!」
「男はあんまりキメキメの女には気後れしてしまう
かといって木綿のハンカチーフ送ってくれとかいうイモ女ともつきあいたくない
というバカ野郎が大半を占めるから自然に綺麗に見せようとするんだビー」
(P24)
もう、なんというか、今すぐにでもコピペに使える名言が1コマに1つ以上あるとでもいうべき破壊力を最後まで保つという恐ろしいマンガなのです。
『さよなら絶望先生』の久米田康治などもあちこちに喧嘩を売っていそうなネタをこれでもかこれでもかとまぶしていますが、彼は「毒」を巧く精製し、絶妙なバランスのうえに成り立つ「笑い」に昇華しています。
ところがこの作品では、その毒をオブラートにすら包まず、むしろ煮詰めて煮詰めて原液以上に濃くしています。
そのため、1コマ1発言に2つ3つ毒が込められているセンスのあるセリフが生まれるわけです。
「あれは「ちょっと派手で個性的」なのがオシャレと思い始めているサインです!」(P52)
「女性誌における勝利は美人になることじゃねえぞ 「愛され」こそが史上!
つまり鼻毛がジャンジャン出てても男にモテれば勝ちだ」(P72)
「なんとなくでモデルになれるとはイケメン様はちがいますな!」(P92)
作者のネガティブと黒い感情が、突き抜けるが故に「笑い」となる奇跡的な化学反応を生んだ作品。万人に決してオススメできませんが、癖になる面白さをはらんだ一冊です。
【ご参考】
●うっかり笑った人だけ面白いネコ漫画 カレー沢薫『クレムリン』(三軒茶屋 別館)
●ブス図鑑(作者による販促blog)
●コラム カレー沢薫の「負ける技術」
●作者のHP「猫痙攣」
●作者のtwitter