「将棋世界」2012年12月号感想

将棋世界 2012年 12月号 [雑誌]

将棋世界 2012年 12月号 [雑誌]

 「将棋世界」12月号を読んでの気ままな雑感をば。

月夜の駒音「負けました」 内館牧子

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 ”将棋は自分の負けを認める数少ない競技”(本誌p36より)という将棋ならではの特性です。それを踏まえた上で、教育現場における運動会の徒競走で皆で手をつないでゴールするような平等主義を”悪平等”と評した上で、勝ち負けをつけることと、それを認めることができる子供を褒めてやることの大切さについて述べたコラムです。一将棋ファンとして、「負けました」はやはり大事にしたい文化だと思います。
【関連】「負けました」 | 志木こども将棋教室

第25期竜王戦七番勝負[第1局]渡辺明竜王×丸山忠久九段 角換わり最前線の攻防

 最高峰の棋戦である竜王戦でありながら、投了時刻午後2時6分と、竜王戦史上最速の終局時刻になってしまった第25期竜王戦第1局についての解説です。あっけない将棋となってしまった背景について、感想戦でのやりとりや控え室の見解などを踏まえながら何とか納得のいく結論を得ようとしつつも、そうはいっても納得いかないものは納得いかないという観戦記者の隠しようのない本音がダダ漏れになっています。ある意味、含蓄のある記事です(苦笑)。
 努力は買いますが、正直言って、この将棋の解説にこれだけ力を入れるくらいなら王座戦第3局の解説をもっと厚くして欲しかったような……。

第60期王座戦五番勝負[第4局]勝敗を超えた名局

渡辺「最後は勝ちになったかと思ったのですが、△6六銀とはすごい手があったものです。結局、自分は何も分かっていなかったというのが印象的です」(本誌p45より)

 羽生2手目△3二飛という意表の出だしから始まり、何と第3期竜王戦第5局:谷川浩司王位対羽生善治竜王戦に合流するというクラシカルな展開となり、そして超難解な終盤戦から△6六銀!という驚愕の一手が飛び出して、結果、千日手となった劇的な一局。そして、その後に行われた指し直し局についての解説記事です。
 2手目△3二飛や△6六銀が指されたとき、某巨大掲示板TwitterのTLやニコニコ生放送など、ネット中継を通じて観戦していたときのギャラリーの反響は物凄いものでしたが、そうした驚きや感動は、本記事からは良くも悪くも伝わってきません。ネットはネット、専門誌は専門誌、ということなのだと思います。
【関連】
王座戦第4局。 - 渡辺明ブログ
17時間の激闘にニコ生大盛り上がり 将棋第60期王座戦は羽生の王座奪還で幕 - ねとらぼ

突き抜ける!現代将棋 第39回「勝手に石田流トーク

 今回はハチワン読者ならおなじみの「石田流三間飛車」の現在についての特集です。石田流対策として(1)左美濃(2)相振り飛車(3)四手目△1四歩という後手からの対策と、早石田乱戦系についての解説がなされています。ハチワン読者であれば押さえておきたい内容だといえるでしょう。

別冊付録 次の一手「天国と地獄」編集部・編

 前半は初級者向けの「地獄への入り口編」として序盤の落とし穴の問題を。後半は上級者向けの終盤問題「天国と地獄編」。序盤問題は基本的な定跡手順と一歩間違えたときの恐ろしさとを確認できますし、終盤問題は「逆転のゲーム」と評される将棋というゲームの恐ろしさを再認識することができます。オススメの付録です。