羽海野チカ『スピカ』白泉社

スピカ 〜羽海野チカ初期短編集〜 (花とゆめCOMICSスペシャル)

スピカ 〜羽海野チカ初期短編集〜 (花とゆめCOMICSスペシャル)

ハチミツとクローバー』『3月のライオン』などでおなじみの羽海野チカの初期短編集です。
 とよ田みのる『CATCH&THROW』の書評でも書きましたが、初期短編集や読切短編集は雑多だからこその作者の濃縮された「エッセンス」が詰め込まれていると思います。
 『スピカ』は羽海野チカの2001年〜2004年の作品を収録したもので、1話1話も短く内容もバラバラですが、それでも羽海野チカらしさがうっすらと通底しています。
 それはどこか寂しげな雰囲気であり、「挫折」を抱えた登場人物たちであり、どこかから差し込んでくる「光」でもあり・・・。
 作者の強い信念によって描かれた作品は読む側も相当なエネルギーが必要ですが、その作者の「思い」をきちんと受け止めることで読み手の充足感が生まれます。
 「夜は暗いからこそ空に輝く星が綺麗なんだ」とでも例えるべき、希望という名の星が夜空にきらきらと輝く短編集。羽海野チカファンにオススメの一冊です。