道満晴明 『ニッケルオデオン 赤』 IKKICOMIX

ニッケルオデオン 赤 (IKKI COMIX)

ニッケルオデオン 赤 (IKKI COMIX)

 「月刊IKKI」にて連載されている道満晴明の短編集です。
 道満晴明の作品は『ヴォイニッチホテル』のプチ書評でも紹介しましたが、『ぱら☆いぞ』『性本能と水爆戦』など主に成年漫画雑誌をフィールドに活躍している漫画家です。
薄めきれない「らしさ」 道満晴明『ヴォイニッチホテル』
 個人的には『ぱら☆いぞ』の破壊力が半端なく好きなのですが、今作『ニッケルオデオン 赤』はどちらかというと「斬れ味鋭い」作品です。
 深夜の動物園でライオンと会話する少女、閉じ込められた校舎でのデスゲームしりとり、失われた左手首を探す少女など、各話それぞれは8ページと短いものの、ヤマありオチあり、まるで星新一ショートショートを読んでいるかのような、はたまた藤子不二雄のSF短編を読んでいるかのようなクオリティ。
 それぞれに「エロス(性)」と「タナトス(死)」が同居し、ハッピーエンドでもバッドエンドでもない、寂しさを覚えるような話の閉じ方は「斬られたことに気づかない鋭さ」というよりも「あえて刃こぼれさせた痛みを残す斬れ味」だと思いました。
 単なる短編の集合体ではなく、そこはかとなく各話が繋がっていることもあり「ひとつのお話」として楽しむことが出来ます。
 1月に発行されたマンガではありますが、間違いなく年末には2012年のランキングに挙げていると思います。
 じっくりと味わいたい、まさに珠玉の短編集。オススメです。