『棺担ぎのクロ。~懐中旅話~ 3』(きゆづきさとこ/まんがタイムKRコミックス)

棺担ぎのクロ。~懐中旅話~ (3) (まんがタイムKRコミックス)

棺担ぎのクロ。~懐中旅話~ (3) (まんがタイムKRコミックス)

 えっと、2巻の発売日が2007年6月27日ってどういうことですか? というわけで、4年と7ヶ月ぶりに3巻が出ました。カバー外して裏表紙に描かれているギャグがまったく洒落になってません(苦笑)。
 棺という縁起でもないものを担ぎながら旅を続けているクロ。「縁起を担ぐ」を辞書で引くと、ちょっとした物事に対して、よい前兆だとか悪い前兆であるとかを気にする。とあります。してみれば、縁起でもないものを担ぎながらの旅は、そうした前兆を気にしない旅ということになるのでしょうが、物語の縁起自体は徐々に見え始めてきました。
 p121の作者コメントによれば、クロの旅は折り返し地点にあるということです。おそらく、本作のゴール自体は、連載開始当初から定まってはいるのでしょう。にもかかわらず、これだけのスローペースになってしまっているのは、作中のクロに迷いのない旅路を歩ませるために、作者自身がそれだけ迷い悩んでいるということなのだと思います。

「最初から一本道」…そう思えばいいのかもね
(本書p91より)

 とはいえ、「指した手が最善手」という境地になかなか至れないのも分かります。「鏡の屋敷」や「願いの叶う緑玉色の都」といった自分自身と向き合うエピソードが本書では印象に残ります。それは、答えは自分自身の中にある、ということを暗めなお伽話だけに暗に示しているように思います。

棺桶なんかを担ぎはじめてからも特に変わった。
旅をする力は付いてきたが、魔女と呪いに歩かされてるような旅にもなっていたよ。
(本書p37より)

 ”旅話”といいながらも、魔女を探して呪いを解かないと命に関わるというクロの旅は、旅という言葉から想像する自由なイメージとは裏腹な一種のミッションのようなものです。にもかかわらず、それを”旅話”といい得るのは、人生という旅路をいかに自らの意思と足で歩むかということに旅の意義が問われているからだと思います。そんなふうにクロを変えたのがニジュクとサンジュなのは間違いありませんが、未だ死の概念を知らない二人に、死を教えるのがクロの役割……という展開だけは勘弁して欲しいです。でも、いったいどうなるのか……。
 続きをせっつくようなことはあえてせず、気長に続きを待ちたいと思います。
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『棺担ぎのクロ。~懐中旅話~』(きゆづきさとこ/まんがタイムKRコミックス) - 三軒茶屋 別館
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