姉萌えマンガの極北?益田ミリ『僕の姉ちゃん』

僕の姉ちゃん

僕の姉ちゃん

 この作者の本を読むのは初めてなのですが、この作品以外では「アラサー&アラフォー女子向けの癒し系のマンガ」を描いているんだとか。うーむ、フジモリには全く縁のない存在ですね(笑)。
 『僕の姉ちゃん』は、アラサー社会人の姉と社会人新米の弟による、二人暮らしでの何気ない会話劇を淡々と描く日常系マンガです。
 姉のない人間(フジモリ含む)にとって物理的に血のつながった姉を手に入れることは当然不可能なわけで(そういう意味で妹はまだ物理的に可能性はゼロではない)、「姉萌えマンガ」というのはある意味ファンタジーに属する部分もあります。
 実際、『ちいさいお姉さん』(ゆとり・マツダ靖/電撃ゲーム4コマ)『うちの姉様』(野広実由/バンブー・コミックス)『鬼灯さん家のアネキ』(五十嵐藍/角川書店『ひよりすと』(魔神ぐり子/芳文社)など「個性的な姉とそれに振り回される弟」という定型はもはや様式美に近い部分もあるといっても過言ではないかと思われます。過言ですかそうですか。
 で、この『僕の姉ちゃん』という作品、同作者の癒し系エッセイ風マンガという系列ではなく「姉萌えマンガ」の延長線上の視点で読むと、これがまたある意味「姉萌えの極北」とも言うべきマンガで、非常に面白かったです。
 姉と弟の他愛もない会話が独特の脱力系な絵柄で描かれます。

 その会話が、「建前として彼氏にはブラジャーを毎日洗うと答えるけど、汗をかく夏場はともかく冬はねぇ」だとか「デートするときは相手の指毛を見れば本気度がわかる」とか、まあこの身も蓋もないことよ。
 なんとなく、『臨死!江古田ちゃん』を彷彿とさせます。まあ、このマンガは毒をワクチンレベルに薄めてはいますけど。
 弟の発言に「あんたって純粋ねー」とか平気でダメ出しをし、女性が持っている計算高さや見たくないズボラ部分をあけすけに発言する姉に対し、妙なリアルを感じる一方で「姉や女性に幻滅する」ことで一周回って萌えてしまう人もいることでしょう。
 姉弟だからこそこういうあけすけな会話もできるのでしょうし、こういう会話ができる姉弟関係というのはある意味そうです。
 女性の視点からは「あるある」となるのでしょうし、男性の視点からは「女っておっかねえ!」となるのでしょうが、この身も蓋もない「あるある」を絶妙なバランス感でうまく「笑い」に昇華しています。
 日常系エッセイ風マンガを「姉萌え」というカテゴリーでくくってはいけないということを自覚しつつも、帯にあるとおり「姉が欲しくなってしまう」不思議なマンガだと思います。
【ご参考】http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-182918-storytopic-137.html
ちいさいお姉さん (電撃コミックス EX 電撃4コマコレクション 140-1)

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うちの姉様 1 (バンブー・コミックス)

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ひよりすと(1) (まんがタイムコミックス)

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