「百合」+「ゲーム部4コマ」の最強布陣。そして「愛すべき”めんどくささ”」 祥人『ふーふ』

ふーふ―電撃4コマコレクション (Dengeki Comics EX)

ふーふ―電撃4コマコレクション (Dengeki Comics EX)

『日がな半日ゲーム部暮らし(以下:日が半)』『ユッカ』などゲーマー4コマ(ゲーム4コマに非ず)を描いております祥人の最新作です。
 主人公はネトゲで知り合ってゲーム上で結婚までした、風莉花と冬太(本名は雅美)の女子高生二人のカップル。
 1話ですでにちゅーまでしている、「これなんて「強くてニューゲーム状態」!?」な感じで始まります。

 作者のこれまでの作品である、女子高のゲーム部を舞台にした『日が半』や、ファザコンの娘と家に現れた謎の少女が日がなゲームをする『ユッカ』などは「ゲーマー」そのものの行動を楽しむ4コマでしたが、いわゆる「恋愛要素」がまったく描かれていないため、本作とのギャップにちょっとびっくりしてしまいました。
 掲載誌が電撃PlayStationということもあり、部活でゲームなどやっていたりゲームの会話がたまに飛び交いますが、『日が半』『ユッカ』ほどゲームゲームしていないというのも、これまでの作品と違っているところかもしれません。
 しかしながら、読みすすめるとこれまでの「らしさ」を保ちつつ、新たな「らしさ」があるなぁ、と楽しめました。

女の子と女の子の物語なのでやっぱり冬太さんも女の子です。
精神的には男の子な人の話じゃなくてめんどくさい女の子の話です。
百合と言っていいのかどうかはちょっと悩む。
やおいじゃないかなこれ。
(P98作者なかがきより)

 作中のカップル、風莉花と冬太(雅美)ですが、雅美は結構真剣に風莉花が好きで、風莉花はなにも考えていなくて「ロールプレイ」の延長のような気分でいて、という二人の「好き」の質の違いがあり、作者が「めんどくさい」というように、雅美はそれについて滔々と悩んだり独白したりします。
 そのあたりは『日が半』『ユッカ』を読んだ読者であれば共通項を感じるんじゃないかと思います。
 また、風莉花と冬太(雅美)に対しツッコミを入れる、同じ部の友達である岡田さんも名脇役としていい味を出してまして、

岡田さんは腐女子の変態性以外のめんどくさい部分を描けるのが楽しいです。
(P50なかがき)

 とあるように、主人公達より作者に愛されているんじゃないかと思うようなオタク女子も登場します。
 彼女の「語り」もまた『日が半』『ユッカ』に通じる「めんどくささ」がありまして、

 とこれまたよくある「自意識過剰」や「言い訳過剰」なオタクのめんどくささをほどよく「笑い」に昇華して描けています。

女の子と女の子の熱い友情でもなくドロドロした確執でもない生暖かい人間関係を描きたいなあというのが最初にあって
色々こね回してこのような漫画になりました。
イタイ子として描かれているイタイ子は元々大好物なのでイタイ子達を描けて嬉しいです。
痛々しくも愛らしく描けていたらいいなあ。
(P18作者なかがきより)

 女の子カップルの「めんどくささ」やオタク女子の「めんどくささ」など、「あるある」でありながら*1読む側があまり「イタク」感じず、むしろ「ほほえましく」感じてしまうのは、登場人物たちに対する作者の「愛情」なのではないか、などと思ったりしています。
 百合ものに強烈なアレルギーがなければ読んで損はないと思いますし、大好物であれば当然のごとくオススメしたい一冊です。
【ご参考】
http://dps.dengeki.com/2011/03/26/p34400/
フジモリのプチ書評 祥人『ユッカ』

日がな半日ゲーム部暮らし (Dengeki Comics EX―電撃4コマコレクション)

日がな半日ゲーム部暮らし (Dengeki Comics EX―電撃4コマコレクション)

ユッカ (電撃コミックス EX 電撃4コマコレクション)

ユッカ (電撃コミックス EX 電撃4コマコレクション)

*1:いや、本当に「あるある」なのかはわかりませんが・・・