チャー『リヴァイアサンのセカイ』ガンガンノベルズ

リヴァイアサンのセカイ (ガンガンノベルズ)

リヴァイアサンのセカイ (ガンガンノベルズ)

−−君たちは、いつの日か”残酷”と闘わねばならない時が来るかも知れない。
(p18)

 献本いただきました。ありがとうございます。
 本書の舞台は、中華の内乱やフランス革命が並列して起こっている「世界」からの鎖国がようやく明けた現代日本
 「吸血鬼」と呼ばれる人外の怪物とそれに立ち向かう「ピースメイカー」との戦いを書いた、「ニューウェーブ伝綺ノベル」*1なのですが、甘く見ると良い意味でも悪い意味でも裏切られます。
 「鎧女騎士」「金髪ツンデレ吸血鬼」など記号化されたキャラクタとネットスラングやアニメ・マンガのオタネタをふんだんにチャンプルーした「いかにもな」ラノベのフォーマットで進められるものの、開始十数ページで萌え姉弟が惨殺されたり、メイド部隊は毒ガスでやられたり、と、まあ、死ぬわ死ぬわ。
 「記号化」されたキャラたちがこれでもかこれでもかと使い捨てられる様子は悪趣味ながらも、甘ぬるい「ラノベ」と違った「エグ味」を感じます。*2
 物語は全体的に救いのない話であり、精神的にあるていど抵抗力のある状態ではないと読むのはキツイかな、などと思ったりしました。
 とはいうものの、一見キワモノのような内容かと思いきや、「人外」の吸血鬼との戦いを、吸血鬼そのものを「強力な軍隊」に模して「シミュレーション目線で」戦略的に描いたり、また吸血鬼自体も戦術や武器を駆使するなどミリタリー要素が満載ですし、「正義」と「悪」が二転三転し読者に様々な形で「絶望」を与えるところなど物語造りの基礎体力は持った作家さんだなぁ、と思いました。
 ネタの混ぜ方や文体などまだまだ荒削りなところはありますが、読み始めると一気に読んでしまう「勢い」を感じました。

君たちは、いつの日か”残酷”と闘わねばならない時が来るかも知れない。
(p286)

 油断して読むと痛い目を見ますので、覚悟のある方のみ読んでほしい一冊です。
ガンガンONLINE
機械式少女(作者の同人サークルのHP)

*1:作品紹介ページより

*2:なんとなく、「ひぐらしのなく頃に」を彷彿とさせました。