『人類は衰退しました 6』(田中ロミオ/ガガガ文庫)

人類は衰退しました 6 (ガガガ文庫)

人類は衰退しました 6 (ガガガ文庫)

 メルヘンホラーな本シリーズですが、なんと(?)アニメ化されるとのことです。
マーベラス公式ウェブサイト - MARVELOUS!(アニメ公式サイト)
 いろいろ不安がないわけでもないですが、とりあえずは続報を待ちつつ楽しみにしたいと思います。そんなわけで絶好調のシリーズ6作目ですが、今回も中編が2本収録されています。

妖精さんたち、すかいはい

鳥人類コンテストだ」
 それを耳にした途端、わたしは電気を流されたみたいにがーんと身を固めてしまいました。
 空を、自由に、飛ぶつもりだ……。
(本書p14より)

 人類と妖精さんの間を取り持つのが調停官である”わたし”のお仕事のはずですが、今回はなぜか「鳥人類コンテスト」の安全対策係を担当させられます。鳥コンに参加する人力飛行機(ただし、科学技術の大半が失われているので『自力で作ったもの』であれば動力は何でもよし)はどれもこれも浪漫に満ち溢れたものばかりですが、現実的にはどれも危なっかしくて飛ぶどころか機体によっては即座に操縦者が死んじゃいそうなものもあります。ということで、”わたし”は妖精さんのメルヘンな力を借りながらこっそりと浪漫と現実の調停をする羽目になります。そんな妖精さんの力を借りた裏工作ですが、これがまたネタまみれです。いや、いつものことではありますが、今回は特に酷いです。こんにゃくゼリーェ……。

妖精さんたちの、さぶかる

「かつてマンガ雑誌では、様々なニーズを満たした作品を多様に掲載していたという。けれど『楠』は違う。同じモチーフに基づいた、ひたすらに趣味的な内容だ。私はこれを同類向けの出版物……同類誌と名付けた」
 同類誌の誕生でした。
(本書p129より)

 友人YのYはやおいのYだったのですね(笑)。ヒト・モニュメント計画のために人類の遺品調査をしていたYですが、マンガに出会ってしまったが運のつき。いや、むしろ天恵というべきでしょうか。Yの趣味に合致したマンガとそれを描く技術が急速に広まり、Yも加速度的に腐っていきます(腐女子的な意味で)。同類誌の誕生。派閥の発生。そして即売会の開催。お話の前半はこんな感じです。
 問題はここから。こんな面白そうなことに妖精さんが黙っていられるわけもなく、妖精さんたちのいたずらによって”わたし”とYと助手さんはマンガの中に閉じ込められてしまいます。キャラクターは?ストーリーは?どうやったらマンガの中から出られるの?それは本作を読んでいただいてのお楽しみということになりますが、小説というジャンルでマンガのコマやカット、集中線といった技法についてあれこれ語られるというのは、とてもメディアミックス的です。おそらくは本作のアイデアのキッカケはアニメ化決定にあるのではないかと思いますし、アニメになることを想像しながら書いたのが本作なのではないのかとも思います。それくらい後半はアニメ的です。マンガ内にいては書けないことを書いている本作がアニメになったとき、小説内にいては表現できないことを果たして表現してくれるのか、今から興味津々です。
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