『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん 10』(入間人間/電撃文庫)

G:反対に、小説家になって「これは厳しいな」と感じることは何ですか?
入間:売れるとひたすらシリーズ化(引き延ばしともいう)を勧められること。どの話も一巻は続編をふまえて出していないので、飽き性にとっては苦行となります。
ラノベ作家の入間人間さんにインタビュー、「嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん」映画化に思うこととは? - GIGAZINEより

 みーくんまーちゃんシリーズも本書で堂々の完結です。
 ライトノベルの1作目というのは1巻で取りあえず完結して、人気が出たらシリーズ化というパターンが多いです。みーくんまーちゃんもまさにそうした例に当たるわけですが、それを自分で「引き延ばし」といってしまう辺りがいかにもこのシリーズの作者らしいです(苦笑)。
 ぶっちゃけてしまいますと、本シリーズは1巻で切りよくオチが着いていましたから、新キャラを登場させたりしてストーリーを続けたのは確かに「引き延ばし」ということになるのでしょう。ですが、本シリーズに関しては読んでてあまり「引き延ばし」という気はしませんでした。というのも、本シリーズのみーくんのスタンスそのものが嘘に嘘を重ねて現状を維持することにありました。つまり、嘘による現状の引き延ばしが本シリーズの本筋だといえます。売り上げ的な要請とストーリー上の要請とが噛み合った幸せな例だといえるでしょう。
 異能や超常現象といったエピソードこそありませんが、まさに騙りと呼ぶに相応しい本書の語りは、ついには9巻にて「小説化現象」まで引き起こすに至って現実感を希薄なものにしていきます。そうした世界観が知らぬ間に構築されているために、陰惨な殺人事件の現実的解決が緩いままでも何となくすまされてしまう空気ができてしまっています。そんな世界だからこそ始まってしまい続けられてきた「終わり」の物語もいよいよ終わり。その結末は副題のとおり「終わりの終わりは始まり」と呼ぶに相応しいものでした。嘘をつき続けることで続いていた本シリーズですが、最後の最後でみーくんの紛うことなき本心を導き出せたということで、まずは納得のいく結末を迎えることができたと思います。
 「嘘だけど」連発の捻くれたネタまみれの語りも、あるいは騙りのための仕掛けも、私は決して嫌いではありませんでした。

 ハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッ(中略)ハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハ。

 そういえば、本書の仕掛けもなかなか大胆で面白かったです。
 描写的にも構成的にもケレン味が強くて、本来であれば好き嫌いが分かれるタイプの作品だと思うのですが、にもかかわらず漫画化や実写映画化といったメディアミックスを見せるのですから世の中なにがウケるのか私にはサッパリ分かりません。……などと、ここまで読み続けた私がいえる筋合いではないですね(苦笑)。シリーズ完結まで嘘つきにつき合ってよかったと思ったり思わなかったりです(嘘だったり本当だったり)。
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