完結を機に『暴れん坊少納言』について語ってみる
- 作者: かかし朝浩
- 出版社/メーカー: ワニブックス
- 発売日: 2007/07/25
- メディア: コミック
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『暴れん坊少納言』は、平安時代を舞台に、主人公の清少納言がハチャメチャながらも憎めない大騒ぎを巻き起こす、スラップスティックコメディです。
清少納言は『枕草子』でおなじみの「あの」清少納言です。「春はあけぼの・・・」という有名なフレーズにはじまり、平安時代の名エッセイストとして学校の古文の時間に必ず習わされる人物、そして作品です。
『暴れん坊少納言』では彼女のキャラクタを「お転婆ツンデレ」として現代風に見事にアレンジしています。
当然ながら当時、このマンガに書かれているようなハチャメチャなエピソードはなかったと思いますし、清少納言もこんなキャラではなかったと思いますが、『枕草子』に書かれているエピソードを巧みに組み込むことにより、「なるほど、この文章の裏にはこんなエピソードがあったのか」と騙されそうになるぐらい(笑)、いきいきとキャラクターたちが動いています。
*1
脇を飾るキャラクターたちも非常に豪華です。
史実でもライバル関係にあった(と思われる)、『源氏物語』の紫式部はもちろんのこと、『和泉式部日記』の和泉式部、『栄花物語』の赤染衛門など、当blogをご愛顧されている文学少女の皆様ならいちいち歓声がでるぐらいの豪華メンバーが物語に絡んできますし、安倍晴明、藤原道長といったこの時代の有名な人物も登場します。
*2
歴史小説や歴史マンガというのは、「本当にあった出来事」を大きな目的地としながらも、いかに行間に妄想を挟み込んでおもしろくするか、というのが醍醐味かと思います。
そういう意味でいうと、現在放送中の大河ドラマ「龍馬伝」なんかはまさにアレンジを加えまくりの「良き二次創作」という感じがしますね。
新撰組・近藤勇がお龍さんを気に入っているという実際に残されている証言をもとに「龍馬と近藤が恋敵になるシーンもある」と新撰組ファンや視聴者をクスリと笑わせるサイドストーリーも織り交ぜていくという。
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また、物語の中ではほのかなラブロマンスもあります。
1巻が出た当時の売り文句として、「この少女、いとツンデレなり」とありましたが、お転婆でツンデレな清少納言と無骨で朴訥な橘則光とのやりとりもまたニヤニヤできます。
*3
7巻かけて二人の距離がじわじわと縮まりますが、ツン9:デレ1の黄金比率は保ったままという見事なツンデレっぷりです。この二人のかけあいも、物語の良いスパイスとなります。
『暴れん坊少納言』は、清少納言という歴史上の人物を「キャラ化」し、史実や『枕草子』のエピソードをなぞりながらも巧みにアレンジしています。
登場するどの女性も非常にキュートで、彼女らの作品にポロロッカしたくなるぐらいです。
ある意味、「歴史の二次創作」として非常に直球ストレートな作品だと思います。
全7巻とわりかしコンパクトですし、未読の方には是非とも勧めたい良品だと思います。