石川雅之『純潔のマリア』アフタヌーンコミックス

純潔のマリア 1 (アフタヌーンKC)

純潔のマリア 1 (アフタヌーンKC)

もやしもん』の作者が送る中世を舞台にしたファンタジーコメディです。

もやしもん』の石川雅之渾身の最新作!!
中世ヨーロッパ、百年戦争の時代を舞台に描かれる、最強にして処女、魔女にして聖女の名を持つ少女の物語、『純潔のマリア Sorciere de gre,pucelle de force』。
教会と天使の理屈に真っ向反逆!!
作品紹介より

マリアという魔女による、勧善懲悪のハチャメチャストーリー。
おつきのフクロウ・アルテミスとの掛け合いは都度笑えますし、『もやしもん』でもそうですが「よく勉強してあるなー」という中世薀蓄を土台にした舞台背景は地に足ついた骨太さを感じさせます。
また、台詞回しも、『週刊石川雅之』『もやしもん』などに見られる独特のクセが本作品にも見られ、絵柄もしかりですがなかなか特徴ある作家なのだと再確認しました。
序盤は魔女(かつ処女)のマリアがハチャメチャするエピソードの積み重ねでしたが、大天使ミカエルが登場し、マリアに「純血を失うとき魔女の能力を喪失する」という枷をはめられます。
*1
この一点だけとると「個人の幸せか、セカイの平和か」という「セカイ系(死語)」のカテゴライズに組み込まれそうですが、『もやしもん』にもあった「きれいごとだけでは生きていけない」という泥臭いリアルさもしっかりと描きこまれており、2巻以降の展開を期待させます。
もやしもん』でもたまに毒のある発言がありますが、
*2
作者・石川雅之は、「愚かしくも憎めない人間」を描くのが非常に上手だと思います。
純潔のマリア』でも同じく、「魔女狩り」をはじめとする中世ヨーロッパの「闇」に生きる愚かしい民衆に対し、主人公・マリアが「魔女」として勧善懲悪の鉄槌を下します。それはまた「魔女」としての理を大きく逸脱するということで「天界」から制裁を受けるのですが、人を救うことと罰することに対する大いなる矛盾に対し立ち向かう「魔女」の姿は、「すべての人を救えるわけではないから救わない」天界の住人に比べ「人間的」でもあります。
*3
もやしもん』から入った方々には2巻の展開しだいでオススメするかどうか判断しますが(笑)、昔からの石川雅之ファンにはお勧めできる作品だと思います。
【ご参考】
舞台となる中世ヨーロッパの「闇」について作者がボヤいている文章です。
http://good-afternoon.weblogs.jp/blog/2009/03/post-7b59.html

週刊 石川雅之 (イブニングKC)

週刊 石川雅之 (イブニングKC)

*1:P156

*2:巻9,P65

*3:P127