山田ズーニー『新人諸君、半年黙って仕事せよ』筑摩書房

新人諸君、半年黙って仕事せよ

新人諸君、半年黙って仕事せよ

本書は、日経ビジネスオンラインに掲載された「新人諸君、半年は黙って仕事せよ。山田ズーニーのフレッシュマンのためのコミュニケーション講座」に書下ろしを加えたビジネス書です。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20090407/191217/
「新人諸君、半年は黙って仕事せよ」というタイトルはいささか乱暴に聞こえるかもしれませんが、中身はしっかりとしたコミュニケーション論です。
例えば、学生から社会人になったときに、一番変わるのは「会社には自分を知っていることがほとんどいない」点。
学生時代の行動はそれまでの自身の性格や状況をすでに知っている人たちがその「背景」を踏まえたうえでうけとっていますが、社会人になりたてのころは背景が「0」の状態。
学生時代なら許された他愛も無い行動が会社ではまったく違ってとらえられるのは、自身の「百分の一」だと思った「1」の言動が、「一分の一=100%」として受け止められるからだ、と述べています。
これは新人のみならず、ネットの世界でもじゅうぶんにありえます。
前後の文脈から切り離された「一言」は、発信者の意図から離れ、ときに真逆に、ときに悪意にまみれ電脳の海を蔓延することがあります。
本書ではこれから社会人として「会社」という船に乗り海に漕ぎ出す新人に対し、自身をしっかりと発しまた相手をしっかりと受信することの大切さとそのアドバイスについて明快に書かれています。
ブログやtwitterSNSなど、対面以外のコミュニケーション形態が多種多様になる現代にこそ、コミュニケーションについてその本質を理解し、「KY(=空気読めない)」ではなく「BY(=文脈読めない)」によるトラブルを未然に防ぐ必要があると思います。
本書はそういう意味で、新人向けと銘打っているものの、「発すること」「受けること」そして「コミュニケーションとは何か」ということに対し読むものに良い「気付き」を与える、あらゆる人にオススメできる良書だと思います。