ブルボン小林『マンガホニャララ』文藝春秋

マンガホニャララ

マンガホニャララ

読んでいると、主人公の存在感が薄いのではなく「無用」という言葉が浮かぶ。黒子や男鹿が無用なのではなく、彼らが主人公である必要がない。少年漫画という仕組みは、とっくに屹立した一人の主人公を不要としていた、と。
最終話、集合写真で終わった『スラムダンク』の頃から徐々に始まっていたことかもしれないが。
(「すっかり草食系?になったジャンプの主人公たち」P107より)

当blogの常連様は、この「三軒茶屋 別館」が書評サイトであることをご存知だと思いますが(笑)、小説やマンガが好きな人も、なかなか書評、マンガ評を読む方は少なく、ましてや書評本、マンガ評本を読む方というのは非常にレアである気がします。(当社比)
本来、書物というものは読み手個人で完結するものであり、また、せいぜい同士による感想/意見交換というレベルでの深堀り程度が一般的だと思います。
わざわざ読んだ本の感想や考察を公開したり記事にしたりなどというのはよっぽどの本好き・マンガ好きでしょうし、それを読む方々もよっぽどの本好き・マンガ好きかと思います。あんたも好きねー。
また、書評本、マンガ本というのはフジモリにとっても敷居が高く、と、いうのも、挙げられている本やマンガを全て網羅しているとは限らないため、どうしても「自身の興味の管轄外の記事」が発生してしまうので損した気分になってしまうのです。
今回読んだブルボン小林『マンガホニャララ』は、そんなフジモリのマンガ評本に対する偏見を心地よく破壊してくれた良書でした。
『マンガホニャララ』はコラムニストのブルボン小林文藝春秋など様々な雑誌で書かれたマンガに対する記事を一冊にまとめたものです。
お題や取り扱うマンガは多岐にわたり、「海原と山岡が和解を遂げた今、次なる展開を大胆に提案する」などネタ的な記事があったり「カラスヤサトシがキャラ全盛時代に開ける風穴」のように本格的なマンガ評をしたり、はたまた「もうそろそろ『THE STAR』のことを語ってもいい頃だろう」のように隠れた名書を紹介したりしています。
語り口はわかりやすく明瞭で、なにより「マンガへの愛」に溢れています。
そのおかげで、フジモリが未読のマンガに対する記事も興味深く読めましたし、そのマンガを読もうという意欲がわいてきます。
ある意味、フジモリ(おそらくアイヨシも)が目指している、「未読の方はその本を読みたくなり、既読の方には再読させたくなる」よい意味での二面性を持ったマンガ評だと思います。
フジモリが好きな記事は『打姫オバカミーコ』について書かれた「語ると決めた漫画、読まないと決める漫画」と顔の見えないキャラについて熱く語る「第一回(?)「顔の見えない脇役」列伝!」。
ちょっと違った角度から書かれた読む人に「新たな発見」を与えるマンガ評。
マンガ好きの人なら読んで損は無い一冊だと思います。