岡崎二郎『大平面の小さな罪』ビームコミックス

大平面の小さな罪 (ビームコミックス) (BEAM COMIX)

大平面の小さな罪 (ビームコミックス) (BEAM COMIX)

小学館ビッグコミック増刊号』で1994年から1996年にかけて連載された岡崎二郎によるSF漫画です。
長らく絶版していたそうですが、このたびエンターブレインより復刊しました。

ある日、JR新宿駅の駅貼りポスターが一区画すべて白紙に取り替えられるという事件が起こった。
人気タレントの写真を使ったポスターだったので、最初はファンの仕業と考えられた。
しかし、一区画すべてのポスターを同じ大きさの白紙に取り替えるという念の入ったものだったので、同じ広告業界の者のイヤガラセではないかということでちょっとした話題になっていた。
そんな折、広告会社に勤める宇田川がひとり会社で残業をしていると、なんと紙の中から女性が出てきた!
驚く彼に、セーナと名乗る彼女は「自分は、この世に存在する平面を管理する“平面管理委員会”という組織のメンバーで、あのJR新宿駅の駅貼りポスターの一件は自分のミスによるものだ」と打ち明けた。
そのミスのおかげで2週間の謹慎処分を受けて憤慨している彼女は宇田川に「自分と組んで、新しい広告ビジネスをしないか」と持ちかける。。。

というお話です。
主人公・宇田川は広告会社に勤めるしがない三次元人ですが、物語に登場する人々の多くは「平面を自由に操り」「平面を自由に移動できる」二次元の住人。
平面を自由に操れるということで犯罪やりほうだいだと思われますが、平面を管理する“平面管理委員会”の存在により、有価証券などの平面変更(書き換え)は監視が厳しくほぼ不可能。また、平面変更した場合場所の大体の特定はされる、という縛りがあります。
しかしながら、犯人たちはその制限の中、平面変更による「小さな罪」を起こしていきます。
「誰が」「なぜ」平面変更を行ったのか?
第1話で平面世界の存在やこの漫画の「ルール」を読者に把握させたあと、2話目以降はまさにSFミステリの様相を呈します。
有価証券を使わずに平面を操って金儲けする方法という縛りも面白いですし、タイトルどおり本当に「小さな罪」のため、肩肘張らずに読みすすめられます。
絵柄はお世辞にもキャッチーとはいえませんが、だからこそ奇抜なアイデアが映え、地に足ついた作品になっています。
漫画という二次元のジャンルを最大限に活かしたSFミステリの佳作としてオススメできます。