百名哲『演劇部5分前』ビームコミックス

演劇部5分前 1巻 (BEAM COMIX)

演劇部5分前 1巻 (BEAM COMIX)

自身が文化部だったこともあり、文化部漫画には目のないフジモリですが、「演劇部」というあまり目にしたことのない題材に惹かれ読んでみた一冊です。

18歳。最後の高校生活。最後の力いっぱい。
実績ゼロ。顧問は不在。部員、たったの3人。廃部の危機に追い込まれ、つい「中部大会出場」という無謀な目標を掲げてしまった玉野高校演劇部。
孤立無援でイバラの道を進むことになった彼らに、救いの女神が現れた!
新鋭・百名哲が描く、芝居を愛する高校生たちのグロリアス・デイズ。掲載時に大きな感動を呼んだ第5話[縄跳びの記憶]を収録。あがり症の部員が、緊張から解き放たれる瞬間が優しく、鮮やかに描かれる。
作品紹介より

これがデビュー作ということで、確かに、正直言って荒削りなところを多々感じます。
廃部の危機にある弱小文化部というお約束(?)のシチュエーションながら、仲間集めをしたり努力しようともせず、だらだらとした、それでいて無駄にエネルギッシュな部活動をしていく彼女らに、思わずいらだちを感じてしまう読者もいるでしょう。フジモリもそうでした(笑)。

しかしながら、ある種「優等生」なキャラが存在しない曲者だらけの物語は、その荒削りな画風、作風と相俟って妙な面白さを持っています。
後書きで作者が言っていますが、演劇部というのは非常にローカルルールな部活動であり、いわゆる「あるある」的な共有体験を持つことは難しいみたいです。
そういう意味で、演劇部「そのもの」を描く漫画をあまり目にしなかったというのも頷けます。
この漫画では「演劇部」そのものを掘り下げて描きながらも、「演劇」を軸として主人公たちが団結する優等生ストーリーとは一線を画し、外枠を徐々に徐々に埋めていくようなスリリングな物語展開を感じました。

はたして2巻では彼女たちが「演劇」するのか?(笑)という、ややイビツな期待感を持たせながらも、回を追うごとに上達していく画力とともに2巻を読みたくなるような勢いを感じる、そんな一冊でした。