私家版2008年国内ミステリ ベスト10

 年末ですので書評サイトらしく一応2008年のベスト国内ミステリなんぞを挙げてみます。ちなみに私家版ですので、刊行年数などにかかわらず私が2008年に読んだ本の中から選ばせていただきましたのであしからず(順位も付けていません)。

エコール・ド・パリ殺人事件

エコール・ド・パリ殺人事件 レザルティスト・モウディ (講談社ノベルス)

エコール・ド・パリ殺人事件 レザルティスト・モウディ (講談社ノベルス)

 何といっても作中作の出来栄えが秀逸です。単独でも美術書として成立していながら、ミステリとしての構成上も欠かせないものになっています。同シリーズの『トスカの接吻』も面白かったので、こちらも併せてオススメします。
【関連】『エコール・ド・パリ殺人事件』(深水黎一郎/講談社ノベルス) - 三軒茶屋 別館

ゴーレムの檻

ゴーレムの檻―三月宇佐見のお茶の会 (光文社文庫)

ゴーレムの檻―三月宇佐見のお茶の会 (光文社文庫)

 幻想性と論理とのバランスが秀逸な短編集。中でも表題作である『ゴーレムの檻』は白眉です。『時を巡る肖像』も面白かったですし、今後も柄刀一からは目が離せません。
【関連】『ゴーレムの檻』(柄刀一/光文社文庫) - 三軒茶屋 別館

裁判員法廷

裁判員法廷

裁判員法廷

 名のない”裁判員”が主役という珍しいミステリですが、趣向の珍しさだけでなくしっかりとしたミステリに仕上がっています。2009年から裁判員制度の施行されますし。そういう意味でも抑えておきたい一品です。
【関連】『裁判員法廷』(芦辺拓/文藝春秋) - 三軒茶屋 別館

デカルトの密室

デカルトの密室 (新潮文庫)

デカルトの密室 (新潮文庫)

 ロボットの主観から人間の知能・自意識という密室の謎に挑んだ意欲作です。SFとして紹介してもよかったのですが、クイーンへのオマージュなどミステリ要素の強さに敬意を払ってこちらに分類させてもらいました。
【関連】『デカルトの密室』(瀬名秀明/新潮文庫) - 三軒茶屋 別館

藤井寺さんと平野くん 熱海のこと

藤井寺さんと平野くん 熱海のこと (ガガガ文庫)

藤井寺さんと平野くん 熱海のこと (ガガガ文庫)

 ラノベ枠が割りと豊作だったのでこちらでご紹介(笑)。坂口安吾の『投手殺人事件』を再検討しながらの推理合戦には『毒入りチョコレート事件』のような面白さがあります。
【関連】『藤井寺さんと平野くん』(樺薫/ガガガ文庫) - 三軒茶屋 別館

館島

館島 (創元推理文庫)

館島 (創元推理文庫)

 タイトルの通り、館ものに相応しい豪快なトリックには忘れがたいインパクトがあります。登場人物たちの軽妙な会話も楽しいオススメの一冊です。
【関連】『館島』(東川篤哉/創元推理文庫) - 三軒茶屋 別館

向日葵の咲かない夏

向日葵の咲かない夏 (新潮文庫)

向日葵の咲かない夏 (新潮文庫)

 先に順位を付けないといいましたが、2008年国内ミステリの私家版ベスト1はこれです。もっと早くに読んでおくべき作品でした。
【関連】『向日葵の咲かない夏』(道尾秀介/新潮文庫) - 三軒茶屋 別館

『アリス・ミラー城』殺人事件

『アリス・ミラー城』殺人事件 (講談社文庫)

『アリス・ミラー城』殺人事件 (講談社文庫)

 北山猛邦らしい物理トリックの楽しさは相変わらずですが、作品全体に施されている仕掛けも見逃せません。
【関連】『『アリス・ミラー城』殺人事件』(北山猛邦/講談社文庫) - 三軒茶屋 別館

ひげのある男たち

ひげのある男たち (創元推理文庫)

ひげのある男たち (創元推理文庫)

 こういうクラシカルな作品が入ってくるのも私家版ならではでしょう。これぞ本格という普遍的な出来栄えに驚かされました。
【関連】『ひげのある男たち』(結城昌治/創元推理文庫) - 三軒茶屋 別館

うみねこのなく頃に

 サウンドノベル公式サイト)ですが、面白かったのでご紹介ー。今年の年末のコミケで新作Episode4が発表されているはずですが、一体どんな内容なんでしょうね?
【関連】
『うみねこのなく頃に』好きにオススメのミステリ小説 - 三軒茶屋 別館
『うみねこのなく頃に』で考える法廷ミステリ的証明の諸問題 - 三軒茶屋 別館


 すっかり文庫派になってしまったので新刊からは縁遠い生活になってしまいましたが(苦笑)、その分、後出し気味にネタに深く突っ込んだ書評で勝負していけたらなぁと思ってたりします。今後ともご愛顧の程よろしくお願いします(ペコリ)。