ミステリ読みが本を読まない彼女にミステリを軽く紹介するための10冊(暗黒編)

【元記事】ミステリ読みが本を読まない彼女に新本格派を軽く紹介するための10冊
 なかなか面白そうだと思ったので自分でも少し考えてみました。ミステリ読みとしては、お付き合いする異性にある程度自分の趣味を理解して欲しいというのは自然な気持ちでしょうが、それによって悪い印象を持たれるのは避けたいところで、そう考えるといろいろと気を使わざるを得ません。そういう意味で、元記事のような企画にはそれなりの意義があると思います。
 これから私が挙げる10冊もそうした観点から少しでもお役に立てば幸いです(えーと、無粋ながらリスク回避の意味で本記事の企画意図を少しだけばらしますと、オススメしたい本という積極的な側面よりも、むしろ、オススメしちゃダメな本という消極的な側面の方がこういう場合にはむしろ重要じゃないかと思います、ということです)。
 なお、以下の10冊をどのような基準で選んだのかは一切申し上げられませんのであしからず。ただ、本当に悪趣味な基準であることだけは申し添えておきます(本当にすいません)。
(以下、人によってはかなり不快な思いをされる恐れがあります。なので、読むも読まないもご自由に。)

13階段高野和明

13階段 (講談社文庫)

13階段 (講談社文庫)

 ミステリといっても人によって様々ですが、そういうときには取りあえず権威に頼るのも一つの手だと思います。本書は江戸川乱歩賞を受賞した傑作です。死刑制度という重いテーマを扱った作品ではありますが、手に汗握る面白さと読みやすさは特筆ものです。本書をキッカケにお互いの人柄に少し踏み込んだ会話ができるようになればよいと思います。

『ステップ・ファザー・ステップ』宮部みゆき

ステップファザー・ステップ (講談社文庫)

ステップファザー・ステップ (講談社文庫)

 プロの泥棒さんとなぜか一緒に暮らすことになった双子の少年とによる連作短編ミステリです。ユーモア溢れる会話と軽妙な文章は読みやすさ抜群です。日本版コージー・ミステリの傑作です。愛くるしい双子のキャラクタはきっと彼女にも気に入ってもらえると思います。
 なお、本書は他に青い鳥文庫版やペーパーブックス版(コンビニ限定販売)も刊行されていますが、それらには収録されていない短編がひとつありまして、それだと今回の企画にはそぐわないのでお気をつけください。

『重力ピエロ』伊坂幸太郎

重力ピエロ (新潮文庫)

重力ピエロ (新潮文庫)

 伊坂幸太郎の作品は本屋大賞の常連ですから、まずは無難なチョイスだといえるでしょう。本書は家族愛・兄弟愛がテーマとなっていますので、そこからお互いの家族についての話なんかして、彼女との会話もきっと弾むことでしょう。

『BG、あるいは死せるカイニス』石持浅海

BG、あるいは死せるカイニス (カッパ・ノベルス)

BG、あるいは死せるカイニス (カッパ・ノベルス)

 すべての人間が女性として生まれ、その中から一部の人間のみが男性化する、というSFチックな設定に基づいたミステリです。せっかく彼氏彼女のお付き合いをしているのですから、少しはジェンダー的な会話があってもよいと思いますし、本書はそのための良いキッカケになってくれることでしょう。

『歌の翼に―ピアノ教室は謎だらけ』菅浩江

 音楽教室の先生である女性が探偵役を務める連作短編ミステリです。謎解きの鮮やかさもさることながら、悩みを抱えている生徒たちの心を癒す温和な先生の人柄が本書の一番の魅力です。もちろん、音楽についての話題も膨らみますから、そこから彼女との話題を作ってもよいのではないかと思います。

『盤上の敵』北村薫

盤上の敵 (講談社文庫)

盤上の敵 (講談社文庫)

 北村薫といえば、ミステリ界に”日常の謎”という一派を確立させた作家として知られていますので、やはりオススメしないわけにはいかないでしょう。強い心と弱い心とが織りなす盤上での駆け引き。それは間違いなくひとつの愛の形でもあります。

『ウェディング・ドレス』黒田研二

ウェディング・ドレス (講談社文庫)

ウェディング・ドレス (講談社文庫)

 ちょっとタイトルが直球過ぎるかもしれませんが(笑)、無事にお付き合いが進んでいるのならむしろ丁度よいのではないでしょうか。本書はかなりトリッキーな構成になっていますので、もしかしたら彼女には難しく思われちゃうかもしれませんが、そんなときに数々の伏線の意味を説明して、それを彼女に聞いてもらえたりしたらミステリ読み冥利に尽きるでしょう。

『殺戮にいたる病』我孫子武丸

殺戮にいたる病 (講談社文庫)

殺戮にいたる病 (講談社文庫)

 一転してシリアスなタイトルになりましたが、本書で扱われているのは現代的な家族の問題です。彼氏彼女の関係も、いずれは家族ということが問題になってくるでしょうから、本書のような作品の意義は決して小さくないと思います。なお、本書もまた複雑な構成と、そして意外な結末が用意されています。もしかしたら彼女に説明を求められるかもしれませんが、それこそミステリ読みとしては望むところでしょう。

神様ゲーム麻耶雄嵩

神様ゲーム (ミステリーランド)

神様ゲーム (ミステリーランド)

 本書は、「ミステリーランド」という子供向けのミステリを目指したレーベルから刊行されています。彼氏彼女の関係も、長続きすればいずれは結婚とか子供ができたらとかの話になることでしょう。そしたら、自分たちの子供にはこういう本を読ませたいなぁ、という話ができたらとても素敵なことだと思います。

閉店時間』J・ケッチャム

閉店時間 (扶桑社ミステリー ケ 6-9)

閉店時間 (扶桑社ミステリー ケ 6-9)

 ・・・・・・真実を隠し通すのにも飽きてきました。本書が最後の10冊目となりますが、ここまでオススメしてもまだ別れずに読んでもらってるなら、いっそのこと本書のレベルまで進めばよいでしょう。本書には中編4作が収録されていますが、この流れでのオススメはもちろん『雑草』です。

 ・・・・・・すいません。本当にすいません。ぶっちゃけ、今回の記事はケッチャムの本を読んだ腹いせで書きました。なんであんな酷いお話が書けるんだろう。馬鹿じゃねーの(笑)。
 上記10冊ですが、1冊1冊だとたいしたことはないでしょう(ケッチャム除く)。しかし、こうしてまとめるとかなりキツイと思います。なので、今回紹介した本の一冊一冊とその本が好きな方にも謝りたい気持ちでいっぱいですが(ケッチャム除く)、しかしながら、こうした分類だってないことはないと思います。テーマとしての重要性は否定のできないところでしょう。ってか、今回紹介した本は自分でも好きな本ばかりです(ケッチャム除く)。なので、同性異性問わず上記のような作品について忌憚なく話ができたらなぁ、という気持ちは本音としてはあります。
 ただ、小説というのは必ずしも読者を喜ばせたり楽しませたりすることを目的として書かれたものばかりとは限りません。さらに、ミステリ(特に本格と呼ばれるもの)の中には、ゲーム性を重視するがあまり、ストーリーを無茶なものにしてみたり、あるいは登場人物を悲惨な目にあわせるといったことが珍しくありません。なので、ゲーム的な面白さ・推理や論理の面白さにばかり目を囚われていると、そうした過酷で悲惨な面を無視したままオススメしてしまう、という危険があることは忘れてはならないでしょう。で、やっぱりそういうのには敏感な人もいるわけですので、その辺りの判断はとても難しいです。私自身、本の話をするときには人も話題もかなり選んでいます。こんなに自由に話ができるのはネットだからです。インターネット万歳(笑)。
 以上、そんなデリケートな問題点を指摘したくて本記事を書いたわけですが、重ね重ね本当にどうもすいませんでした(汗)。