号外さんちゃ0250号

 竜王戦第5局は佐藤二冠が角番を何とかしのいで第6局まで勝負を持ち越しました。
 それにしても不思議な将棋でした。封じ手△1二香からの穴熊には驚きました。最近『とっておきの相穴熊』という良書が出ましたが、相穴熊といったら居飛車振り飛車の対抗形を指すのが普通で、本局のような相居飛車戦での相穴熊というのは極めて稀です。堅さを重視する現代将棋を象徴する一局だといえるでしょう。
 とはいえ、序盤は先手の作戦勝ちだったらしいのですが(それも良く分かりませんが)、後手からの仕掛けを先手が受け損なってからは後手ペースで進みます(ずっと渡辺のターン!)。一時は素人目にも後手勝勢と映るくらいに形勢が離れました。ところが終盤、秒に追われたわけでもないのに後手が疑問手を重ね、結果、「穴熊の姿焼き」が投了図となりました。
 ファンとしては一局でも多くの将棋が観られるのは歓迎ではありますが、本局の渡辺竜王の終盤の心理状態がどうだったのか少々気になります。次こそは切り合いの勝負が見たいなぁと思いつつ、この調子だとどうなるか分かりません。不安交じりの楽しみを抱きつつ、次局に期待したいと思います。