「ユリイカ」荒木飛呂彦特集全記事レビュー

 今週一週間沈黙しておりましたが、競馬のショックが尾を引いただけではなく、11/12に発売された「ユリイカ荒木飛呂彦特集を読んでいたからです。活字の洪水で時間かかりましたが、ようやく読み終わりましたので全記事の簡単な感想を描いていこうと思います。(冗長さを避けるために文体を「で・ある調」にしています)
■表紙&目次ウラ
 『JOJO6251』に掲載された絵。
荒木飛呂彦×斎藤環×金田淳子の鼎談
 あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!
荒木飛呂彦先生が講演会に出演している近況や
 連載当初の状況を話していたのに
 気付いたらインタビュアーがジョジョカップリングや
 やおい妄想を一方的に話してた』

 な… 何を言ってるのか わからねーと思うが
 おれも 何をされたのか わからなかった…
 頭がどうにかなりそうだった…
 催眠術だとか超スピードだとか
 そんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ
 もっと恐ろしいものの 片鱗を味わったぜ…
AA略
草森紳一の評論
 ジョジョにおける「フォーム」についての語り。フォームの解説なのに画像が一切使われていないので読む人は脳内でシーンを浮かべて欲しい(笑)。
杉田俊介の評論
 介護ヘルパーである筆者が自らの人生とジョジョを重ね合わせ「運命を克服すること」について語る。ジョジョにおけるテーマの一貫性と拡大についてはなるほどと頷ける。
西島大介コラム
 バオー来訪者を娘と観る、というコラム。同じコンセプトで本誌もやっているが全く同じノリ。
■瀬藤光利エッセイ
 荒木飛呂彦が表紙を飾った「CELL」の論文を書いた科学者のエッセイ。これは良い内容。依頼する際に、荒木先生が「セルって超一流誌じゃない。面白そうだ、セルだったらやってもいいよ」と快諾したエピソードがベネ。
加藤幹郎の評論
 ジョジョマニエリスム(技巧主義のこと。ルネサンスバロックの中間に位置する)について。「ジョジョは本体とスタンドの2体であり、二人が対決する際は画面に4体の人物が登場することになる。この1コマにおける濃い人口密度で、かつ読者にごちゃごちゃした印象を与えないのはスゴイ」という内容。確かに。
暮沢剛巳の評論
 荒木飛呂彦がどのような作品から影響を受けてきたかという「立ち位置」について解説。「記号」と「古典」の対比。
■田邊剛イラストエッセイ
 『累』の田邊剛がディオ(正確には「ザ・ワールド」)を描いている。
元長柾木エッセイ
 タイトルは「ジョジョだってインフレする!」。ジョジョを「パワーのインフレ」ではなく「ルールのインフレ」とし、「子供はいつだって「スゴイ」をほしがるものだ」と語る。着眼点が面白い。
■丹治匠イラストエッセイ
 映画「雲のむこう、約束の場所」の美術などをやっている丹治匠がヘブンズドアーで本にされた杉本鈴美を描いている。エロチック。
金田淳子の評論
 ディオとジョースター家の長き争いについて。ディオが6部まで「一人」なのに対し、ジョースターは「血統」を受け継いでいるという対比は面白い。つまりディオ×ジョジョ誘い受け)ということでよろしいでしょうか?
■「ジョジョ立ち」ヒストリー
 ジョジョ立ちの歴史。この本の中で一番ジョジョに対する熱意が伝わってくる。自サイトに書いていない裏話も書かれておりお得な気分。
宇波拓の評論
 ジョジョと洋楽について。「ジョジョそのものがユーロ・ロックである」という論。音楽家ならではの意見。
■イズミノユウキの評論
 ピアノ・ファイアの人。「荒木割」と呼ばれるほど独特なジョジョのコマ割について解説。普段意識していなかったが改めて指摘されると「なるほど」と思う。
■スタンド事典
 全スタンドについて解説。細かいツッコミが面白いが、メタな指摘(プラネットウェイブズはもともとアース・ウインド・アンドファイヤだったが未起隆とかぶったので修正した、など)が無いのが評価が高い。
小澤英実の評論
 ジョジョにおける「肉体」の変遷について。作品が進むにつれて分離していた「肉体」と「精神」がまた融合している、という視点は面白い。
■彩景でりこコミックエッセイ
 ジョジョ腐女子的エッセイ。
吉田アミの評論
 第6部についての解説。「物語を終わらせる」役割であった第6部はジョジョファンにとって複雑な思いを抱かせる作品であるが、落ち着いて、振り返って読むと新たな発見がある。
野中モモの評論
 荒木作品における「女性」の位置付けについて。ゴージャス・アイリンから20年。女性を取り巻く世の中も女性を取り扱うマンガも変遷してきた。やはり女性が主人公の第6部は特殊であり、ゴージャス・アイリンで描けなかったものを描くことに成功している。そして世界は一巡する。「私の名はアイリーン」
宮昌太朗の評論
 スタンドの存在を神学的に考察。スタンドは人間とこの世ならざるものを結びつける媒介である。

 フジモリの記事ベスト3は「ジョジョ立ち」「イズミノユウキ評論」「瀬藤光利エッセイ」でした。
 さまざまな立場の方が書かれているので当然記事の内容に濃淡がありますが、皆さんジョジョに対する愛に満ち溢れており興味深く読めました。
 11月後半には重版がかかるそうですのでゲットし損ねた方は是非ともご入手ください。