中野明『ブルー・オーシャン戦略がわかる本』秀和システム

 ブルーオーシャンといってもナディアともワンピースとも関係ありません(笑)。
 この本は、チャン・キムとレネ・モボルニュが提唱した「ブルーオーシャン戦略』をわかりやすく説明したビジネス書です。現在、最もホットな経営戦略論として注目されており、単行本『ブルー・オーシャン戦略』は世界中でベストセラーになっています。
 ブルー・オーシャン戦略というのは、簡単に言うと「競争が激化する市場(レッド・オーシャン)を避け、まだ生まれていない市場、未知の市場であるブルー・オーシャンを目指すことにより、競争そのものを無意味にする戦略」のことです。
 いわゆるニッチ(マイナで大手が注目しない間隙に参入すること)との違いですが、ニッチは既存市場を細分化して、その中からマイナな部分を見つけ商売にするのに対し(例えるなら服屋さんでいう「大きな人向けの服の専門店」など)、ブルー・オーシャンは市場そのものの境界を引きなおします。
 通常は業界を取り巻くファイブ・フォース、「新規参入業者」「競争業者」「代替品」「買い手」「供給業者」という5つの要因から自身の分析を行い、「差別化」「低コスト化」「業務集中」のいずれかの戦略を選択し、市場細分化(セグメンテーション)を行なうのですが、ブルー・オーシャン戦略ではこれらの定石と異なる、従来の競争戦略論とかけ離れた考え方によって進められます。
 ブルー・オーシャン戦略には7つのフェーズがあります。
 (1)現状の分析と理解
 自社を取り巻く現状を戦略キャンパスにおとしこみ、業界全体の状況、競争相手のプロフィール、自社の戦略を理解します。
 (2)戦略の方向性と策定
 非顧客に目を向け市場の境界を引き直し、6つのパス(「代替産業に学ぶ」「業界内の他の戦略グループに学ぶ」「買い手グループに目を向ける」「補完材や補完サービスを見渡す」「機能志向と感性志向を切り替える」「将来を見通す」)によるアプローチを行ないます。
 (3)4つのアクションの実践
 Eliminate(取り除く)、Reduce(大胆に減らす)、Raise(大胆に増やす)、Create(新たに付け加える)という4つのアクションを起こし、低コスト化と差別化を同時に実践します。特に「Eliminate(取り除く)」と「Create(新たに付け加える)」を大胆に実行することが重要です。
 (4)フィードバックの実践
 複数の戦略キャンパスを描き、これを公平なプロセスで評価します(チャン・キムとレネ・モボルニュはこれを「ビジュアル・ストラテジーの見本市(戦略見本市)と称しています)。そして評価された内容を最終的な戦略キャンパスにフィードバックします。
 (5)ビジネスモデルの構築
 最終的に策定された戦略キャンパスに対し、「買い手にとっての効用」「価格」「コスト」「実現への見立て」について検討し、「商用に耐えうるブルー・オーシャンアイデア」を構築します。
 (6)組織間のハードルを越える
 組織の4つのハードル(「意識のハードル」「経営資源のハードル」「士気のハードル」「政治的なハードル」に対し、影響力のある少数の人を味方につける「ティッピング・ポイント・リーダーシップ」によってクリアします。
 (7)実行を見据えた戦略を立てる
 「金魚鉢のマネジメント」と呼ばれる公正なプロセスによって戦略の導入と実行を行ないます。公正なプロセスを支えるのは3つのE(Engagement:関与、Explanation:説明、Clarity of Expectation:明快な期待内容)です。
 これらのフェーズを経てブルーオーシャンへの航海、すなわち市場の一番手になるわけです。
 ただしブルーオーシャンもいずれ追随者が参入し、競争が激化、レッドオーシャン化します。ブルーオーシャンは永久に続くわけではないのです。その場合、新たなブルー・オーシャン戦略が必要となります。
 この本は図やまとめが分かりやすく、コンパクトな容量ですがブルー・オーシャン戦略のイロハを理解することが出来ます。
 経営戦略論というは普段馴染みの薄いカテゴリーかもしれませんが、「ブルー・オーシャン戦略」そのものは知っておいて損ではありません。当然ながらblogやサイトの方向性や戦略を考える上でも非常に参考になると思います。
 まずはこの本で概要を理解し、興味を持ったら本編を読む、というプロセスでもよいかと思います。
 「ブルー・オーシャン戦略って、単語は聞いたことがあるけど、どんな内容なんだろう?」と思っている人にオススメです。

ブルー・オーシャン戦略がわかる本 (Shuwasystem Business Guide Book)

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