藤田和日郎『黒博物館 スプリンガルド』講談社

黒博物館 スプリンガルド (モーニング KC)

黒博物館 スプリンガルド (モーニング KC)

 『うしおととら』『からくりサーカス』の藤田和日郎が、19世紀ロンドンに出没した「怪人」バネ足ジャックのエピソードを大胆にアレンジした活劇漫画です。
 3年前にロンドンを賑わせた怪人「バネ足ジャック」が再び出没した。スコットランド・ヤードのロッケンフィールド警部は犯人を放蕩貴族ウォルター・デ・ラ・ボア・ストレイドと睨むが・・・という話。
 森薫『エマ』は19世紀末を舞台にしているのでそれよりは年代が少し早いですが、当時の雰囲気が良く出ていると思います。そのロンドンを縦横無尽に飛び回るバネ足ジャックが非常に躍動感溢れ、読むものに「異様さ」というインパクトを与えます。
 あらすじだけ聞くとホラーか怪人退治のアクションものかと思うが、さにあらず。内容は「藤田節」全開で、ときおり放つセリフが読者の胸を撃ちます。
「花を…植えるときは… 一人でやれってさ」(p148)
 フジモリはこのセリフが一番印象に残りました。
 後日譚の「マザア・グウス」もボーイ・ミーツ・ガールものとして出色。
 藤田和日郎のエッセンスがぎゅっと詰め込まれた1冊でした。
 あと、キュレーター(学芸員)さんサイコー。作者は否定してるけど、この人主人公でお話描いて欲しいです(笑)。