大西科学『ジョン平とぼくらの世界』GA文庫

高校3年の新学期。北見重は一人の新入生に出会う。
彼女は春休みに迷い込んできた岡崎三葉にそっくりだったのだ。
榊雨弓と名乗る彼女は、校内に「グループ」と呼ばれる取り巻きを作っていき…。
という話。
(以下、ネタバレは無いですが既読者向けに)
シリーズはこの巻で一区切りとなります。
「ぼくらの世界」というタイトルから「セカイ系」かな?と思いましたがさにあらず。
前二巻で引っ張りに引っ張った伏線が意外な形で結集される構成は見事なもので、しかしながら「最後の選択」を主人公・北見重に託すところ、そして北見重が「何を」選択したのかという理由と決断は「キミとボク」ではない一つの「世界」を余すところなく書ききっています。
そういえばちょっと前にこんな記事がありましたよね。
●いつも感想中 - ライトノベルに見る親子関係の稀薄さ
エンダー(使い魔)と北見重は本当の親子ではありませんが、だからこそエンダーは亡くなった父親の代わりに「父親らしく」しようとし、北見重はその「父親らしさ」に反抗します(もっとも、これは普通の「反抗期」なのかもしれませんが)。
今作ではもうひとつの「親子」も描かれており、この作品の一つのテーマは「家族」なのかな、と思いました。(親子ではなく家族としたのは、ジョン平を含めているからです)
ラノベって親子関係が希薄な作品が多いなぁ」と思っている方にもオススメです。
【関連】
 ●三軒茶屋本館 フジモリの書評 大西科学「ジョン平とぼくと」GA文庫
 ●「ジョン平とぼくと」についてもう少し語ってみる
 ●『ジョン平とぼくと』『ジョン平と去っていった猫』使い魔メモ(ネタバレ注意)