別館号外さんちゃ0106号

 紹介し忘れてましたが、伊坂幸太郎重力ピエロが映画化されるそうですね。……どうなんでしょうね?(笑)
【関連】アイヨシの書評『重力ピエロ』



推理モノで「これはねーよ」と思ったもの(カジ速)
 ヤベ。傑作としてうちの書評で紹介してるものが結構混ざってるのですが(笑)。「ねーよ」にも、物理的に「ねーよ」と、物語の展開として「ねーよ」との、大きく2つに分けられると思いますが、論理的=現実的では断じてありませんからね。ま、楽しんだもの勝ち、ということで(笑)。

 『ユリイカ』2007年4月号は米澤穂信の特集です。米澤穂信について語る場合には、ミステリとライトノベルと、2つのアプローチがあると思います。で、本誌の場合、ミステリサイドは法月綸太郎『ふたたび赤い悪夢』、あるいはジョセフィン・テイ『時の娘』といった歴史ミステリや、”日常の謎”や東京創元社の”ミステリ・フロンティア”というレーベルにおける特徴など、さまざまな視点から米澤作品の分析を試みられていて、とても読み応えがあります。それに比べて、ライトノベルサイドはそろいもそろって”涼宮ハルヒ”ばかりですよ。そりゃ、評者はそれぞれ独立した存在ですからあらかじめ打ち合わせしたりする必要はないですが、それにしたって、こんなベタなネタがかぶったりしたら、芸人ならずとも恥ずかしさを覚えると思うのですが、いかがなものでしょうか? 福嶋亮大の論考がなかったら、ライトノベルにあまり詳しくない『ユリイカ』の読者がライトノベル涼宮ハルヒと思ったとしても、これでは仕方がないでしょう。ってゆーか、”きょん”は”キョン”ってカタカナ表記しましょうよ(笑)。
 ミステリ読みとしては、とても楽しい本に仕上がってると思います。米澤穂信の現在の主戦場が東京創元社であることを考えれば、ミステリの観点からの分析が充実していれば十分でしょう。『古典部シリーズ』や『さよなら妖精』の特徴である”不在の当事者の心にわけいる、という主題”がさらに詳しく論述されてたり、担当編集者によるラノベから東京創元社への”越境”の事情など、とても興味深い内容ですので、ミステリファンにはオススメです。
 対談は、笠井潔のと滝本竜彦のと、2つ載ってるのですが、どっちも米澤穂信特集のはずなのに対談相手の方が目立ってるように思うのは気のせいでしょうか。笠井潔との対談の方は、道尾秀介作品を未読のアイヨシは100のダメージを受けました(笑)。でも、ミステリというジャンルの大枠についての、あるいはそれより外のイメージが語られててなかなか面白いです。滝本竜彦との対談では、小説という形式についての2人のこだわりの差が感じられて面白いです。ってか、ケータイ小説ってそんなに読まれてるんですか? アナログな私にはまったく実感が沸かないのですが……。真正面から「人間を描く」ことに向き合うと、人間一人の持つ情報量の莫大さに卒倒しそうになるという滝本発言(p193)が妙に印象に残りました。
 ミステリ読みの楽しみ方として、taipeimonochromeさんも語っておられますので参考になさってみて下さい。
 また、本誌には『さよなら妖精(書評)』の後日譚にあたる短編『失礼、お見苦しいところを』も掲載されていますので、米澤ファンには問答無用にオススメな一冊です。