大西科学『ジョン平とぼくと』GA文庫

 フジモリがよく見に行くサイト「さて次の企画は」で絶賛されていたので読んでみました。

 舞台は「科学」と「魔法」の立場が逆転した世界。人々は魔法を使い、使い魔と一緒に生活してるけど、火を点けるならライターを使い、戦争するなら銃を使う、そんな世界。
 魔法の苦手な主人公、北見重は大した能力もなさそうな使い魔・ジョン平とともにうだうだと日々を過ごしている。
 そんなある日、重の通う高校に新任の物理化学教師がやってくる。それと同時に学校にはおかしな出来事が起こるようになり…。

 あらすじだけ読むとミステリィや学園伝奇に思えますが違います。そりゃもう大手を振って違います(←?)。
 主人公はオチコボレで、友達の輪からちょっと外れたところにいて、変に世を拗ねた目で見ていて、女の子と話をするときに緊張して、という言わば「文科系男子」そのもの。ナランチャならずとも「それはオレなんだよ、ブチャラティッ!」と叫びたくなっちゃいます(←?)。
 「時をかける少女」書評で語った「戻ってやり直したい過去」ではなく、「戻っても繰り返したくない過去」がそこにあるわけです。読んでて身悶えするぐらい辛くなったり恥ずかしくなったりします。
 でも主人公はオチコボれ、いろいろと辛かったり恥ずかしかったりするけれど、成長していくのです。
 しっかりとした世界観のもと、読者(フジモリ)が同調するぐらいのダメ主人公がいて、成長して、その隣に犬がいる。
 そんな、お話です。
 上記の解説に少しでもピンと来たら一読することをオススメします。
 ピンと来なかった方は、えーっと、まあ、来月アップ予定の書評で改めて語りますのでピンときてください(笑)。

 超大作ではなく丁寧につくられた佳作と呼ぶべき作品ですが、雨後の筍のように出ている書籍の群れの中からこういう作品を掴み取れるよう、アンテナを日々研ぎ澄ましていきたいな、と思いました。
【関連】三軒茶屋本館 フジモリの書評『ジョン平とぼくと』

ジョン平とぼくと (GA文庫)

ジョン平とぼくと (GA文庫)