『時をかける少女』(筒井康隆/角川文庫)

 どうしても書評しろというので書評しますが、ハッキリ言って凡作だと思います。
 つまらないというわけではありませんが、特に面白いとも思いません。
 キャラの心情がそんなに書き込まれているわけでもないのに、きみがあなたが好きだと言われてもピンときませんし、タイムパラドクスの問題もシンプルにして乱暴に解決しています。ですから、SFとしての面白みもたいしてありません。ジュブナイルとしてはそれなりに良く出来てるとは思いますが、佳品という評価が妥当ではないかと思います。
 ただし、タイトルはとても秀逸だと思います。久米田理論によれば主観時間において人生の折り返し地点は19歳ということですが、物心つくまでの年齢を仮に5歳と仮定すると、5歳から19歳の14年間はもっとも濃密な時間だということが言えます。ですから、人はいくつになってもその頃の思い出をとても懐かしく思いますし、同窓会での思い出話は何回もループします。作中の少女はSF的に時をかけますが、私たちだって時をかけます。時をかけてどうなるというわけでもありません。ただ懐かしむだけです。大切なのです。そんな気持ちの上澄みを、このタイトルはとても上手く表現していると思います。
 以上、原田知世版は主題歌しか覚えてなくて、アニメ版はまだ観ていない人間の書評というより感想でした。明日は絶対アニメ版を観にいくぞ(←宣言しておかないとすっぽかしかねないダメな奴)。